食欲の秋はなぜ起こる?―喜燥悪湿

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 暑くもなく寒くもない秋は、過ごしやすいので食欲の秋、スポーツの秋などが言われますが、何故でしょうか? 環境変化が身体にもたらす働きを東洋医学から考えていったときに、大切なことがあります。

 秋は暑さも穏やかだから、身体の調子がよくなるというのもあるのですが、東洋医学では、自然が身体に与える働きについて深く観察しているものなので、食欲の秋も説明することができます。

 

 食欲と大きく関係しやすいのは、脾になるのですが、湿度が高いときは脾の働きが低下しやすくなります。夏は暑さが強いだけではなく、湿度が高い状態が続きますよね。夏は食欲が落ちるという人も多いですよね。

 

 暑くて食欲が低下するとソーメンや麺類を食べるという話しも聞きますが、冷たくてツルツルと食べられる麺類は夏には人気になりますよね。夏の暑さが日本屈指の山形ではソバ・ラーメンの人気が高く、ラーメン消費量が日本一と言われますね。

 

 山形のソバは板ソバ、ラーメンは冷やしラーメンが名物なので、本場のものを食べてみたいところです。流しソーメンで楽しみながら食べるというのも夏を乗り切るためのものですね。

 

食べ物の話を書くと食べたくなってきます。

 

 暑くて食欲が低下するのは、暑さだけではなく、湿度の問題が強いと考えるのが東洋医学の考え方になります。脾の働きを低下させやすい状態は、食欲が落ちるときと同じなのでどういった状況かを考えてみると、

  1. 夏の暑い時期(暑さと湿度)
  2. 運動をし過ぎたとき
  3. 身体を全く動かしていないとき
  4. 精神的に悩んでいるとき

になります。東洋医学では、湿、労倦、安逸、思慮過度のときに脾胃の働きが低下すると言われています。

 

 暑さで食欲がなくなるというのは、この湿との関係が大きくなり、この働きのことを喜燥悪湿(きそうあくしつ)と表現をしていて、脾と対応する胃は喜湿悪燥と表現をしています。これは湿度が高い状態は、脾の働きを損傷させやすく、胃の働きは向上しやすいと言えます。

 

 胃の働きは食べ物が入り、通過する場所なのですが、脾は食べ物を消化する働きがあるので、脾の働きが低下してしまうと、食欲があっても消化・吸収がうまくできなくなってしまいます。

 

 暑くても湿度が低ければ、辛く感じるのって少なくないですか?

 

 東洋医学では、ただ単に熱い状態は火といい、湿度が加わった状態を暑と呼びます。もう、やる人も少なくなったかもしれませんが、「暑中見舞い」というのは、「暑に中(あた)っているので辛いですよね」ということで安否を尋ねるものですし、「残暑」という言葉もありますが、湿度が高くてムワッとする熱さのときに使います。

 

 まあ、本来の意味よりも時期で使う季語みたくなっているので、実際の暑さなどは関係ないことが多いですけどね。

 

 秋になると暑の季節ではなくなり、燥の季節になると言われるので、脾はそれまで抑えられていた働きが発揮できるようになるので、食べる力も強くなります。実際は夏の後で秋の前に長夏(ちょうか)という季節概念を入れると、秋の長雨の時期は食べ物が多く収穫できるときとも言われます。

 

 夏に食生活のバランス(内容・量・時間)が悪くなると、脾の働きが影響されてしまい、気候の湿の影響も受けてしまうので、その後の季節で体調を崩しやすくなります。秋に脾が働きやすいからと言って、食生活のバランスが乱れてしまえば、さらに脾の働きが損傷してしまい、身体の調子は崩しやすいです。

 

 東洋医学の古典では、冬に体調を壊せば、夏に体調が悪くなり、夏に体調を壊せば、冬に体調が悪くなるという話しがありますが、日々の生活が積み重なって、その後の身体になっていくので、養生が大切だという話しにもなります。

 

 これから残暑もあり、秋になっていきますが、夏の食生活はどうだったでしょうか?

 

 あまりよくなかったのであれば、これから気を付けていくことが大切で、冬に体調が悪化しないように注意をしてください。

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