胃内停水の虚実

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 胃内停水という言葉がありますが、これは、心窩部の胃と思われるところが、ピチャピチャと音がなる状態になり、痰湿の問題が生じていると考えられます。

 痰湿は、水分を取り過ぎてしまった場合、湿度が高い状態、水を循環させる働きが低下してしまった場合に生じやすいものになります。

 

 鍼灸学校では、胃内停水は痰湿の証拠であり、痰湿となれば実証ということになりますが、本来は実証だけとは限らない状態になります。

 

 体内の水の循環では脾・肺・腎という3臓が協調して働くことで、必要な量の水が体内に吸収され、過不足なく全身に流れて、余分や汚れてしまったものは排泄されることになります。

 

 この3臓の働きが低下してしまえば、水がうまく循環しない状態になってしまい、身体のいたるところで水分の過不足が生じてしまいます。

 

 不足したところは乾く程度ですが、過ぎた場合には水のゴミである痰湿になってしまいます。痰湿は内生五邪と呼ばれ、ただのゴミの状態になりますが、水のゴミが停滞し、長期化してしまえば、身体に問題を多く生じるので、これが「痰湿証」になります。

 

 痰湿証は、鍼灸学校の教科書では実証であり、虚証はないという考え方になりますが、発生段階からのことを考えていくと、胃内停水という痰湿であり実証は、臓腑の働きの低下の虚証から発生した実証の場合がかなり多くなります。

 

 水の停滞である痰湿は、脾によって発生しやすいので、「脾は生痰の源」という言葉で表現されることがあります。痰湿は飲食によって得られてくるものであり、口から入ってくることが多いものなので、脾胃は痰湿が溜まり、停滞しやすい場所になります。

 

 肺は水の循環に関係しやすい場所で、水が流れてくるところであり、水のゴミである痰を体外に排出するところなので、肺は「貯痰の器」になります。

 

 水の循環させる力が弱ければ、身体を流れている水がうまく流れていかないことになるので、肺の弱りによって、全身に痰湿が発生してしまうこともあります。

 

 腎は体内にある水の全体量を調整する働きがあるので、余分な水がある場合は、腎が対外に排泄されるように働いていきます。腎は生命力の根本である「精」との関わりが密接なので、加齢によって精が低下していくと、腎の機能は障害されていきます。

 

 高齢になると、むくみが酷くなり、取れなくなってくることも多いですが、東洋医学的に考えていけば、これは腎の働きが低下してしまったことで、体内の水分量の調節をうまく行うことができずに、必要な水を出してしまったり、出さなければいけない水を出せなかったりすることで、生じてしまう状態になります。

 

 この3臓は協調して働くことで水の調整をすることができますが、加齢、疲労などの様々な要因によって、疲労してしまうことで、働きが低下してしまうことになります。

 

 胃内停水は教科書的には痰湿の実ということで終わってしまっていますが、実際には胃内停水を発生させる原因をしっかりと見定めていくことが大切なので、各臓腑の働きはしっかりと理解しておきたいところです。

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