鍼灸の流派はどう選ぶか

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1.何故、流派があるか

鍼灸治療には流派と呼ばれるものがあり、大小合わせると分からないぐらいあります。そんなにあると治療内容はどうなるかと言えば、治療に対する考え方が違うので治療内容も代わってきます。

これがいい部分でもあり、患者さんからすれば言われることが毎回違うという不信感にもなり、学生などからしても何を勉強すればいいか分からないということになります。何故、このような問題にもなることが当たり前のようになっているかと言えば、古典文献には考え方ややり方も書かれているのですが、全ての解答が載っている訳ではないことによります。

 

例えば、スマホの使い方でも、文字入力の方法は大体同じですが、フリック派、何度もタップをする派、ローマ字入力をする人というように、同じ文字を入力するということでも得意・不得意や好き・嫌いによって分かれますよね?

さらに、文字入力アプリを使う人や文字登録を多くすることによって、人それぞれに違いが生まれるのと同じように鍼灸もやり方の得意・不得意や好き・嫌いが治療者側にも分かれていきます。

 

スマホなどは何十年、何百年使っている物ではないので、物自体が変わってしまえば、使い方も全く変わるでしょうが、鍼灸ということで考えた場合、日本では1400年は続いているので、多くのやり方が生まれては消え、または伝わり、その人なりの個性が合わさることによって、違いが生まれています。

 

私自身は、技術的な要素が強い仕事だと思っていたので、やっぱりあるのかという気持ちでしたが、他の人からすれば意味が分からない状態にもなってしまいますよね。ただ、現代医学的な考えや病気に関しては同じなので、鍼灸師同士で、現代医学の病名を使って患者さんの情報を伝えることが出来ます。

 

2.鍼灸治療の一般的な方法

(1)治療に対する考え方

鍼灸の流派を考えていくのに当って、鍼灸治療はどういう形が多いかを知っておいた方がいいので、鍼灸治療の一般的な方法をまとめてみます。治療の大まかな方法としては、まずは3つあります。

・局所治療

・全身治療

・局所と全身治療

局所治療は腰が痛ければ、腰に鍼をするという方法で、全身治療は身体の状態を把握して必要と思われるところに鍼をするので、腰が痛くても腰に鍼を行わない方法で、局所と全身治療は身体に必要と思われる鍼と痛みがあるところに鍼を行う方法で、多くのところで行っています。時間や値段はその治療者次第になることも多いのですが、一般的には局所治療は一番時間が短い傾向にあり、局所と全身治療は一番時間が長い傾向があります。

 

(2)姿勢

治療を行うのに、局所は局所を打ちやすい体位になるのですが、全身治療が入る場合、大体は型があります。

・あおむけ

・うつ伏せ

・座位

この3つの姿勢を使うことが多く、座位で診察が始まり、あおむけ、うつ伏せ、座位という順番で進むことが多いです。治療者によっては座位から、うつ伏せからというパターンもあるのですが、体位に関してはこの3つが多く、他には側臥位を使うところがあります。

 

(3)道具の違い

鍼灸の治療では鍼と灸のどちらを中心にするのかでも変わってきますが、鍼自体も長さや太さを考えると、様々な種類があり、刺す・あまり刺さないでも変わるので、治療スタイルが変わってきます。お灸も道具の違いもあり、熱い・熱くないもあるので、治療スタイルが変わってきます。

ただ、流派や治療者によって得意・不得意や好き・嫌いが分かれるので、流派のスタイルと一致しないこともあります。

 

3.流派はどう選ぶ

鍼灸師としてどう選ぶかという視点について考えると、自分が好きな治療スタイルを考えることが大切になってきます。例えば、スポーツの現場を中心で考えると、全身治療もできた方がいいのですが、痛い場所をすばやく行っていくことが必要なので、現代医学的な考えを押さえながら、運動疾患に強いところを探すのが一つの方法にもなります。

美容鍼灸もやりながら、身体の状態も見たいというのであれば、全身治療も増えてくるでしょうし、体位もいろいろと変わるので全身治療を行う流派を考える必要があります。

流派を選ぶ際には、最初は全く分からないので、学校にいるなら教員、同級生、友人、先輩に聞いてみて、一度行ってみるのが一番いいと思います。そこで、自分の考えやフィーリングが合えば、継続して行こうかと思うでしょうし、それが入口でもいいと思います。

 

患者視点からすれば、初めて鍼を受けるのであれば、

「初めてで怖いので様子を見ながらでお願いします。」

と言っておくのがいいと思います。鍼灸師からすれば、体質的にお灸が合う、鍼が合うと判断することもあるのですが、受けていて辛いしよくならないのであれば変えた方がいいですね。

 

4.流派を選ぶ必要があるか

鍼灸師からすれば流派を選ぶ必要があるかと言えば、それは自分次第とも言えます。と言ってしまうと回答としては、責任がなさすぎるので、メリット・デメリットを考えた上で判断した方がいいと思います。

・メリット

鍼灸の勉強も練習も一人だと心が折れてしまうことがありますが、誰かがいると頑張れるし、教わることが出来ます。治療自体は一人っきりで向き合わないといけないので、相談するのに同じ治療をしていれば、どこを変えたらよりよくなるかというのを教わることもできます。

・デメリット

勉強と練習はしていても、不得意な鍼などが生じることがあり、自分のいる流派を中心とする余り、他の流派や考え方、やり方を否定する傾向があります。

というところなのですが、メリットの方が多いとは思いますし、デメリットは自分次第で克服もできるので、どこかに所属して継続して学習することもいいのではないかと思います。

 

5.私自身と流派

私自身は、流派に入るというよりは、いろいろな所に顔を出して、いろいろな考え方や治療を学ぶというスタイルになっています。治療のスタイル自体は、治療時間や場所などによって局所、全身などを使い分けていて、道具もいろいろと使っている状態です。

一つに絞った方がいいのではという考えも自分の中にあるのですが、いろいろなところに行くことによって、考え方の幅や扱える道具の幅が広がるのもあるので、この状態になっています。

長い人生なので、もしかしたら、どこかに所属するというときがくるかもしれないですけどね。友人も、流派に入ったり、流派が変わったりという経験をしていますし、私自身はまだ探しているのかもしれないです。

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