鍼を刺入するときに、背部はよく用いていきますが、危険部位を理解していないと、気胸も起こしてしまう部位なので、注意が必要ですが、上背部は肩甲骨という指標があるので、身体の構造を比較的正確に想像することができるので触診においては大切なところです。
学生時代に練習をしていて、肩甲骨を触っていたつもりでも肩甲骨ではなくて肋骨という経験が何度もあったので、卒業してから上背部の施術で鍼をほとんど刺入しない状態が続きました。
患者さんは首、肩こりの訴えることが多いですし、背部の辛さを訴えることもあるので、背部の刺入に関しては、怖かったので何度も確認しながら行うようになりました。その状態が10年以上続いているので、現在では肩甲骨を正確に触れるようになったと思っています。
それでも、事故を起こしてしまったら、患者さんに申し訳がないので、何度も確認するのは続いています。以前よりは、バタバタしていないので、受けている方はそれほど気にならないとは個人的に思っています。
肩甲骨を正確に触るために必要なのは、まずは、身体に対してまっすぐと触れられているかを確認することが大切になります。どういうことかと言うと、まっすぐ触ったつもりでもずれてしまうことがあります。
例えば、上の図をみてもらうと、本来は左側のように肩甲骨内縁を直接触らないといけないのですが、右側のように肩甲骨のさらに内側から触っていっても肩甲骨内縁を触れることが出来ます。
これは皮膚を滑るように斜めに押せば触れるというのもあるのですが、右側のこの部位は肋骨を触れることが出来るので、肩甲骨内縁を触っているつもりでも肋骨のことがあります。
10年も経てば、いろいろな人にも会いますし、経験が浅い人にも会いますが、肩甲骨内縁をしっかりと触れない人はキャリアに関わらずいるので、自分がしっかりと触れているかは確認しておくことが必要だと思います。
肩甲骨を触れるということに関わらず、触診を行うのには、身体を正確に触れる必要があるので、身体の円型というのを意識して、垂直に触る練習は大切だと思います。練習方法としては、座った状態で大腿前面を真っすぐ押してみるという練習は斜めに押せば洋服のしわが寄るので、母指・示指・中指などでも練習して確認することができます。
これは身体を触る基本の真っすぐということなので、皮膚を滑らさないで触る練習は日々しておくといいと思います。私自身も感覚がずれていないのか練習は続けています。
肩甲骨が触れているかどうかを確認するのに一番いい方法は、肩甲骨を動かしてみるのが確実になります。肩甲骨を動かすのに大きく動かす必要はありません。
例えば、うつ伏せの状態で肩甲骨を動かすのには、肩甲骨は肩峰に付着するので、肩峰を少し引くだけでも肩甲骨が動きます。鎖骨まで持って大きく動かすことをする人もいますが、私は肩峰だけでも今は分かるので、鎖骨から動かすことはないです。
最初のうちは、肩峰だけでは分かりづらかったので、鎖骨や烏口突起を引いて動かしたりもしましたが、慣れてくれば肩峰で十分だと思います。こういったことをしていると身体の動きというのも知識だけではなく、手でも理解できるようになるので、身体のどこが問題かというのも分かっていくようになります。
ここまでして、触れるようになったら、後は鍼の刺入になりますが、鍼の刺入に関しては、切皮をして少し刺入をしたら、どの方向に向かっているかを一度確認するのが大切です。切皮をして一気に刺入をしてしまうと、間違った方向だった場合に取り返しがきかなくなってしまうので、必ず確認を行うことが大切です。
解剖学を確認しながら触れていくと理解も深まりやすいのですが、教科書だと立体が分からないので、私はアプリなどを使いながら確認しています。
刺入を少ししたら、鍼管でどのぐらい入っているかの確認を行うと、危険領域に鍼が入っていないかを確認することができます。段々と慣れてくれば、どのぐらい刺入したかは感覚で分かるようになるので、確認する癖をつけることが重要だと思います。
体表を触るのに重要な部位についてはこちらのブログでも書いているので参考にしてみてください。
「棘突起を触るコツ」
「解剖学の重要性」