1.精は何か?
東洋医学を勉強すると、気も重要だけど、精も重要だという話をされると思いますが、簡単に考えれば、生命についての説明の前提が違うものです。
・気→生きている状態を分類
・精→産まれ続けている状態を分類
何を言っているのかわかりづらいですね。気は生命現象の生きている状態を陰陽論で考え、それに合わせて4つの気で分類をして説明をしています。
精は、動植物は産まれ、産んでいくというサイクルがあり、これを陰陽で考えると、2つに分けられるので、それぞれに名前をつけています。
・産まれる力 →陰→先天の精
・産む力 →陽→後天の精
生命は産む人がいて、産まれる力がなければ生命を得ることができないので、この産まれるということに関しては先天の精があるから産まれたと言うことができます。産まれた生命は、産まれただけで栄養を取らなければ死んでしまうし、栄養を取っていかなければ、次の生命を作る力がなくなってしまうので、これを後天の精と言います。
先天の精で産まれ、その後の成長は後天の精が必要であると表現をしたら、産まれた時に身体が弱かったのは先天の精が弱かったからで、その後に誰よりも健康なのは後天の精が充実したからと言うことが出来ます。
人よりも体力があり産まれた人は先天の精が強いので、無茶も出来るので、暴飲暴食や無理をすれば、年とともに体力が低下したり、病気になってしまったりしますが、これは後天の精を軽視したと表現することが出来ます。
先天の精・後天の精という話をすることによって、気では説明できなかった生命現象の時間軸について説明が出来るようになります。そのために、精とは生命力や生殖と関係しやすいので、生殖器の問題が生じた場合には、この精を中心とした治療をすることが必要になると考えます。
精自体は、動植物が存在している時間軸での生命現象の説明になるのですが、これだけでは説明出来ないのが、生殖能力の獲得になります。例えば、人間も産まれたときに男女というのは分かれますが、この時点では生殖能力がありませんよね。
子どもという次世代を作るのには時間が必要で、これを第二次性徴と言いますが、東洋医学では、天癸という言葉によって説明をしていきます。
まとめると、産まれるのに先天の精が必要であり、その後の成長には自分で栄養を摂取していかないといけないということで後天の精が必要であり、身体が成熟してくると精が成熟し天癸が発生し、次世代を作ることが出来ます。
天癸は生殖能力と考えることができ、その根底には精が充実しないといけないということになります。ではこの天癸はいつに出来あがるかというのも大切なのですが、男性は16歳、女性は14歳と言われています。
人の成長や老化は、男性は8歳毎、女性は7歳毎にするものであり、天癸は2倍で発生するという文章が古典文献に書かれているところからきます。生殖能力が充実しないということで、生殖のトラブルは天癸の問題ということで、精の治療をすることになります。
2.精と気の関係
気は生きている現在の状態での生命現象の説明、精は親子という生命の時間軸での説明になりましたが、生きているということは、今があり、親や子があるというのが当たり前になるので、気と精で完全に分けてしまうと東洋医学としてまとめられないので、気と精は関係していると言われます。
気では元気・宗気・衛気・営気という4つのものがありましたが、この4つを考えたときに、生命力と関係するのが元気であり、それ以外は生命現象が継続することを言っているので、精と組み合わせることが出来ます。
・生命→先天の精→元気
・現象→後天の精→宗気・衛気・営気
生命は産まれるとか存在するということなので、気では元気に該当し、先天の精と言われ、先天の精が元気に変わると言われます。親から産まれて元気にしているという文章で理解しもらうのがいいかもしれないですね。
産まれた後は、食事をすることによって生命を維持、発展させていくのですが、これは生命の様々な現象が含まれるので、宗気・衛気・営気が含まれ、後天の精から作られると言われます。
このように気と精が関係するということで、身体の状態や症状を気の種類から考えることによって精の問題を考えることが出来ますし、生殖の問題(精の問題)から気の種類を分けることによって治療方針を分けることも可能になるので、身体の状態を把握するのに、気と精が密接な関係にあるということは大切になります。
3.精と臓の関係
精という内容で身体の状態を把握することが出来ても治療として成り立たせるのは難しくなってしまいます。先天の精が弱いということは親の問題だから産まれる前から治療しないといけないと言われたら、悲しいですよね。
もちろん、丈夫な子どもを産むために、親は健康に注意をしないといけないというのは当然のこととして考えられているので、大切ではあるのですが、後からでも治療が出来るし、生殖能力(精)を強めるために必要な臓というのが決まっています。
先天の精は腎、後天の精は脾と関係すると言われており、治療も腎を中心か脾を中心かで分けていきます。この考えは気についても言え、元気の治療は腎、宗気・衛気・営気は脾を中心で治療をするとも言えます。
そうなると、脾は万能ですね。ただ、この臓という考えには他にも肝・心・肺があり、気への働きもあるので、他の臓から使い分けることがあります。この考え方が東洋医学でよく用いられる五臓になります。
五臓は内容も多いので別でまた説明します。