東洋医学の中に神の思想がありますが、これは宗教で言われるような神という意味ではありません。東洋哲学での思想が根底にあり、症状や病気と組み合わせられているので日本東洋医学でも用いられているものです。
・神の思想って何だろうか
神という思想は五行で「神気の思想」と呼ばれ、五行の分類表では「五神」とも言われています。何故、神という概念が成立しているのかを考えたときに、人の持つ生命力は不思議なもので力が及ばない神秘なものであるという考えが根底にあります。
その生命がどのように成り立っているのか分からず、不思議な力があるということで、それを気という言葉で説明されることが多いのですが、人の力を超えたものとして神という言葉もあるので、気と同じような意味としても用いられています。
これは多分、神という概念があり、気という概念もあり、東洋医学をまとめていく際に一緒にしていったのではないかと思います。
・日常生活と神の思想
神気という概念は神志・心神とも言われますが、東洋医学を学ぶときには、五神ということで習うことが多いものです。この成立した背景は身体の中も神秘だという気持ちがあったのだと思います。身体を開けてみたら、いろいろな物があり、生きているときは動き、連携しているということで、それぞれの物には不思議な力である神がいるのだと考えたのだと思います。
食事のときに、「頂きます」「ごちそうさま」ということで手を合わせますが、これは食べ物や作ってくれた人に感謝を表していますが、物ではなく、「何か」に対して手を合わせていますよね。この行為に関係するのが神とも言えます。
もう少し具体的な話しをすると、食べ物を残すと、「もったいないお化け」が出るとか「バチが当る」という言葉があるように、そこにある物にも神が宿っているという考えは普段の生活の中にありますよね。
これは多神教(世界には神が沢山いる)という考えが根底にあるので、中国・日本では当たり前のように受け止めているのが特徴でもあります。
・五神の分類
身体の中を分けるのは五行を用いるのですが、五臓に関連する神はそのまま五神として五行に分けられていきます。
・肝―魂
・心―神
・脾―意
・肺―魄
・腎―志
それぞれの臓が生命を宿す力としてこの五神という概念があるのですが、これはツボの考えの中にも存在していて、背部の経穴にも表れていて、国家試験前に必須の学習になる経穴の横並びにもなります。もちろん、国家試験だけではなく、治療をする際にも背部はよく用いるので卒業してからも必須のものになります。
・肝兪―魂門
・心兪―神堂
・脾兪―意舍
・肺兪―魄戸
・腎兪―志室
五神の思想には、気・血・津液・精の概念を含めて話しが出てきている訳ではないので、古い考え方にもなるかもしれません。ただ、陰陽の考え方は入っていると思います。特にその関係がみられるのが、魂魄になります。
人を陰陽論から考えたときに、心と身体があるのが人の生命になるので、この心を魂とし、魄を身体としています。陰陽論で考えられる魂門を五神に入れたのは何故なのかは今後も考えてみたいと思います。
・五神の詳細
五神として成り立たせるのに重要なのは、この5つの神で生命現象を説明するものであり、簡単に言ってしまうと以下の機能が中心になります。
・神―生命現象の大本
・魂―本能
・魄―行動
・意―思考
・志―経験
神は生命現象そのままであり、精神・肉体的活動の全てに関わり管理する役割になるので、リーダーの役割が与えられています。
魂は本能と考えることができますが、感情の調節の働きもあり、こころの活動にも関与をする働きがあります。神の働きによって管理調整が行われています。
魄は神と同じように、精神・肉体的活動に大きく関与するものになるのですが、神の支配下にありながら、生命活動を行っています。
意は思考と考えることが出来るのですが、何かを考えるという精神的な活動に大きく関与するものになります。
志は経験とも言われますが、持続する働きがあり、根気とも強く関係をしていて、精神的な活動に関与しています。
このように神気にはそれぞれに与えられた役割があり、各臓の働きに問題が生じたときに、神気が障害されるとも言えます。魄は肉体的な活動に関与をしていきますが、その他は精神的な活動と大きく関与していきます。