東洋医学の大きな特徴としては経絡の話がありますが、どのぐらいの数の経絡があるのかというと全部で20あります。学生のときは、この20の経絡の名前や働き、病気などをしっかりと覚えて、関連するツボや働きを覚えることが必要になります。
1.経絡の分類
経絡の概念としては、全身に気血を送らないといけないので、全身隅々まで経絡の働きが存在しないといけない状態になります。現代医学でいえば、血管や神経が全身にくまなく分布しているのと同じになります。
全身くまなく分布するということは、20本だけでは足らないので、経絡は細かく枝分かれをするという考えがあります。全身くまなく分布するためには、人間の身体を上下左右に経絡が走行することが必要になり、上下に走行するのを経脈、左右に走行するのを絡脈といいます。
経絡は経脈と絡脈から出来ていると考えることが出来るのですが、上下左右からさらに枝分かれしていなかいと全身くまなく分布しないので、絡脈からさらに枝別れするものとして孫絡(そんらく)、浮絡(ふらく)という表現があります。
治療においては、経脈・絡脈は使っていくのですが、孫絡・浮絡は使うということはほとんどないので、概念として捉えておくのでいいかと思います。これで全身くまなく分布すると言えるのですが、体内にも分布がないといけないので、経別(けいべつ)という概念があります。
経別は名前の通り、経脈から別れるもので、経脈同士の連携を強める働きがあると言われています。治療において重視する人もいるのですが、結局は経脈に対する治療になるので、重視しなくても治療は出来ます。
2.正経と奇経
経絡の数は20という話しをしましたが、正式には経脈が20になります。この経脈の内訳は正経が12、奇経が8とされています。正経と奇経ですが、これは身体のメインとなるのが12で、サブシステムが8あるということになります。
病気になったときには、サブシステムから治療を加えた方がいいということですが、例えば、音楽プレイヤーのデータがおかしくなったら、パソコンからデータを整理したりすると思いますが、身体もメインとサブがあるという考え方になります。
奇経の中でも非常に大切なのが2つあるとしていて、正経の12と奇経の2つを足して14経脈の学習が重要になります。正経は12あるので、全て臓腑と繋がるものになり、奇経の2つは身体の前後正中線と関係します。
14の経脈は走行にも特徴があるのですが、ツボが所属しているということで重要だとされています。奇経の残り6つは、正経のツボを使うので、正経を学習していれば、どこが関係するかを理解できるものになります。
奇経のツボがない6つは、貨物列車みたいなものと考えることが出来ます。貨物列車は既存の線路を使って、駅を通過するので、正経を利用しながら走行している状態になります。他に言い換えるなら、正経のドクターイエローというところでしょうか。
※ドクターイエロー:新幹線の線路や架線などをチェックする車両です
3.正経と奇経の使い方
正経は身体の調子を整える上で必須のものになるので、通常の鍼灸治療においては、正経を使うのが中心となり、奇経の中でもツボがある2つは身体の正中線となるので、使われる頻度が高い傾向があります。
奇経は身体の調整ということで、症状があるときはサブシステムも働いているので、症状や状態に合わせて使うことがあり、奇経の病や走行を覚えておくことが必要になります。
病が発生した状態はサブシステムが働いているということを中心に考えたら、正経を使わずに奇経だけで治療が出来るという理論にもなるので、正経を使わずに奇経のみで治療する人もいます。
その際、よく使われる方法は奇経の連携ということで、手足の配穴を組合せて用いることが多いです。
- 陰維脈:内関―公孫:衝脈
- 陽維脈:外関―足臨泣:帯脈
- 督脈:後渓―申脈:陽蹻脈
- 任脈:列欠―照海:陰蹻脈
4.まとめ
正経と奇経を使うということでは、その時々によって変える人もいますが、いろいろな使い方が出来るので、奇経は知っておくといいと思います。奇経自体には、郄穴や絡穴がありますが、基本的には八脈交会穴(八宗穴・八総穴)がメインになるので、ちょっとした症状とツボを覚えるだけなので、簡便に使えると思います。