症例3_解説と治療

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 症例3の解説と治療ですが、肺腎両虚による病能と考えることができます。肺腎両虚では陽虚・陰虚が生じることもあり、四診をもう少し行うと確定しやすくなります。

1.解説

 右上肢のしびれがあるのですが、上腕と前腕のしびれの部位を確認しておくことが大切になります。実際にしびれがあった部位は、母指・示指・前腕橈側と上腕外側で母指・示指・前腕橈側は第6頚神経領域、上腕外側は第5頚神経領域になるので、右第5、6頚神経の圧迫があると考えられるので、頚部と神経走行上の硬結をよくみておくことが必要ですね。

 

 東洋医学で考えると、咳がひどくなっているので、呼吸に関係する肺・腎の問題が生じているのではないかと考えられます。特に夜間頻尿が発生しているのですが、腎の二陰(前陰・後陰)に対する働きが低下して、排尿障害が発生していると考えられます。

 

 患者さんは、「夜にトイレが近い」という一言で終わらせてしまうことがあるのですが、「5回、6回」というように、1時間ごとに起きている場合もあり、睡眠への影響が強く生じていることも多いので、「夜中にトイレで何回ぐらい起きますか?」と尋ねておくことが必要です。

 

 座っている状態から立ち上がるときにめまいがするのは、腎の働きが低下していることによって、髄海の滋養が不足していると考えることが出来ます。

 

 上肢のしびれに関しては、肺は皮毛と関係をし、皮膚の問題である表層のしびれ・痛みは肺と関係しやすいと考えられます。冷房に当ると悪化するというのは陽気が不足していると考えることができるのですが、皮毛と衛気の障害があるので、外邪が影響すると悪化しているのではないかと考えられます。

 

 状態としては肺腎陰虚ですが、気虚が進行すれば陽虚を発生することがあるので、陽虚の傾向があるのではないかということは考えられます。

 

2.治療

 治療に関しては、肺・腎の働きを活性化させることも大切なのですが、表層である皮毛の問題が発生しているので、陽に関係するところを治療することが必要になります。

 

 陽と関係しやすいのは、陽維脈があり、外関が八脈交会穴になるので、しびれが外関に鍼を当ててみて、1~2分してしびれが軽減するかを確認しながら鍼の刺入深度を変えるといいと思います。

 

 陽維脈と関係しやすいのは、陽脈の海と呼ばれる督脈も効果が高いので、督脈と陽維脈が交会する場所である、大椎も効果的になります。悪風が生じている方に大椎をもちいると、その後に一層膜が出来上がる感覚を持つ人もあり、しびれがある部位が温まって、しびれの強さも軽減することがあるので、お勧めなのですが、お灸の方がより効果的だと思います。

 

 透熱灸を扱うのが難しい場合は、患者さんに大椎部をシャワーでよく温めてもらったりすることでも軽減することがあります。

 

 腎の働きを強めるのに、志室を用いると消化器系の働きもよくなるのでお勧めなのですが、志室は直刺で刺入を行うと気胸の恐れがあるので、正確に斜刺で内方に向ける方がいいです。

 

 肺の働きを強めるのに、肺経は中焦から生じるので、中脘を用いるのも効果的なのですが、中脘を刺激しすぎてしまうと、吐気をもよおすことも多いので、鍼で切皮置鍼しておくのもいいと思います。

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