腱鞘炎はなかなかよくならないので、鍼灸でも試してみようという人も多いので、対応することが多い疾患の一つだと思います。局所治療でも効果が出るのですが、遠隔治療においても効果が出ることが多いので、鍼灸の魅力を伝えられる疾患とも言えます。
腱鞘炎は手をよく使う人になりやすく、短母指伸筋腱・長母指外転筋で生じることが多いので、国家試験の中でもフィンケルシュタインテストとして学習していますよね。
痛みのある局所に対して鍼や灸で治療をしている人も多いでしょうし、それでも効果が出るものなので、作業で疲労する度合いより、治療の方が多くなれば治っていくことが多いです。
局所では、直刺で刺すのもいいのですが、腱に沿って水平刺を行うのも有効です。痛みが出ているところだけではなく、短母指伸筋・長母指外転筋の走行を考えて、偏歴や温溜に直刺や水平刺を行っても効果がでます。
私自身は局所を行っていくのであれば、一番痛みがあるところからではなく、起始である偏歴や温溜から始めて局所を治療していくパターンが多いです。何故、局所から行わないかといえば、痛みが発生するところが少しずつ変化してしまうことがあるので、遠隔から行って、段々と痛みが出る範囲をせばめていきたいからです。
これだけでも、痛みのあるところだけではなく治療を行うことが出来るので、筋や経絡の話をすることが出来ます。他には、痛みがある経絡走行の末端部も用いることが多いです。
末端部に関しては、刺入をしようとしても皮下に骨が触れてしまうので、切皮か水平刺を行うことが多いです。手関節部の痛みがある上下から治療を行っていくことによって、痛みの部位や動作痛が変化をしていくので、局所への刺鍼をせずに円皮鍼で終わりにすることがあります。
円皮鍼であれば継続した治療効果が発揮できるので、それ以外の筋層が深いところはこちらで治療をして、普段は円皮鍼で痛み止めをしたいという目的ですね。
手指や上肢の治療を行うのには、他には背部を用いることができます。背部にある膈兪穴はばね指の特効穴としても知られているので、膈兪を上肢疾患に用いることも可能です。
資格を取り始めた当初は、膈兪で対応することが多かったのですが、膈兪は洋服を着ていると刺鍼をするのが大変ですし、刺入方向や深さを誤ってしまうと気胸のリスクが発生するので他で治療をしたいと考えるようになりました。
経絡を勉強するにつれて、手の経筋は肩甲骨に関係することが多いので、膈兪ではなく、肩甲骨内縁・肩甲骨外縁・肩甲骨上で圧痛や硬結を探して、その部位を押さえることで痛みが軽減するのが分かったので、最近は肩甲骨付近で反応を探すようになりました。
反応は虚や実で現れることがあるので、虚の場合であれば陥凹していますし、実の場合は硬い硬結で痛みを伴うことも多い傾向にあります。
直刺で深く刺入するというよりは、斜刺や水平刺で対応することが多いのは、硬結自体が表層からそれほど深くないというのが理由です。
場合によっては局所だけではなく、肩甲骨付近にも円皮鍼を使うことにより、継続的な治療効果を考えることがあります。
出産後のママさんも腱鞘炎で苦しむことが多いですし、なかなか治療室に来られないので、その場合は、背部を旦那さんに揉んでもらったり、お灸をしてもらったりするようにしています。
手技療法でもこの方法は使うことが出来るので、腱鞘炎の患者さんがいたら、背部の凝りを取ってあげると、痛みが少し軽減するので喜ばれますね。