肝の働き

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 東洋医学では五行に分けた五臓で身体の働きや病気を考えていくことになります。最初は肝からスタートしますが、肝は五行では木に該当し、木の働きである曲直を理解しておくことが大切になります。

各臓には、いろいろな生理機能があるのですが、働きの面から考えると陰陽で分類することができます。例えば、肝の働きは疏泄・蔵血として表現されているのですが、肝の陽の働きは疏泄、肝の陰の働きは蔵血と考えることができます。

 

肝の働きの大本は、曲直と考えることができます。曲直と言われても意味が分からなくなりますよね。

 

 曲直は、草木が曲がりながら成長していく様を現しているので、肝の働きは広がりと上へ上りやすい性質があります。上や広がりということから、肝の性質はもともと陽気が強いところなので、陽気が不足しづらいともいえます。身体の中での働きとしてはツルを考えてもらえるといいと思います。

 

 ツルは隅々まで浸食していくので、身体の働きの多くに肝の影響があると考えるのが東洋医学の考え方で、疏泄がこの曲直と大きく関係をしています。

 

 情志(感情)、気機の推動、脾胃の働きの補助、月経・排卵・射精などの生殖器にも関係をするので、身体の機能の多くが肝の影響を受けていきます。

 

 これは、身体の働きと症状を考えたときに、ストレスが強く貯まったときなどには、なんとなく体調が悪くなってしまったり(気機の推動低下)、食欲が低下したり(脾胃の働きの補助が低下)、月経・排卵・射精がうまくいかなかったりという状態を肝の疏泄というキーワードでまとめているものです。

 

 月経・排卵という女性機能の多くにも関わるので、女性では肝を先天と考えて治療を行うという考え方もあります。

 

 肝の陰の働きと考えられるのは蔵血であり、これは血の栄養する働きと関係をしていきます。肝は筋と目と関係をしやすいので、肝に十分に血が存在することによって、筋と目が働くことが出来るとしています。

 

 筋や目を酷使してしまうと、肝血が不足し、肝の障害が発生することがあります。現在は、筋を酷使することは少ないですが、パソコン、スマホなど目を酷使することが多いので肝血の不足になり、筋の問題が発生することがあります。

 

 筋の問題は、しびれ、ふるえ、痙攣と言われることが多く、まぶたがピクピクト動く眼瞼痙攣や足がつりやすいのも肝血と大きく関係をしていきます。

 

 肝に血がおさまっているというのは、解剖学の知識も入っているのではないかと思います。古典文献の中に、解剖の記載があり、細かい構造が分からなくても、肝臓は血が関係しているというのは知識として知っていたのだと思います。

 

 肝の性質としては他には柔肝ということが言われているのですが、これも解剖学や病理学の知識が含まれていると思います。肝臓の障害が発生して、肝炎になった後に、肝臓がんや肝硬変に移行していきますが、この病能を見ることによって、肝臓は柔であるべきだと考えたのだと思います。

 

 こうやって見てみると、東洋医学の用語は国家試験前に何となか覚えるのが学生時代の傾向でしたが、よく考えて作られていると思います。

 

 肝の病態では、曲直の性質があるので、上昇や広がりやすい性質があるので、めまいや頭痛は肝と大きく関係すると言われています。肝経は頭頂部と関係しやすいので、頭頂部に痛みなどが発生している場合は、肝の問題が生じていると考えられます。

 

 さらに肝は五行では木であり、風も木に該当するので、風によって症状が増悪してしまうことがあります。肝自体も障害が発生すると、風を生じることがあるので、風による症状が発生をしてしまいます。

 

 風の症状は、風邪の症状と関係しやすいものが多いのですが、めまい、ふるえ、しびれ、痙攣という肝の問題で発生する症状と関係をしているので、肝と風は関係が深いです。

 

 陰陽や五行をよくよく知っておくのが大切だというのは、こうやって自分でまとめてみるとよく分かりましたし、五行の色体表を治療室に飾っておくのは、日々、復習をするということでもあるのだと思います。

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