臓腑は臓が陰で、腑が陽と分類されていますが、陰陽論は、物事を相対的に分類する考え方なので、臓の中でも陰陽を分けることができます。古典文献の記載でも見られるのですが、個人的見解も加えてみたいと思います。
1.位置から分ける陰陽
『霊枢』の九針十二原、『素問』の金匱真言論の中に見られる記載をまとめます。
- 陰中の陽:肝
- 陰中の陰:腎
- 陽中の陽:心
- 陽中の陰:肺
- 至陰:脾
これは身体の構造として上下で分けて考えたときに、上が陽、下が陰で分類することができ、心・肺が上、肝・腎が下にあるので、心・肺は陽、肝・腎は陰に属すると言えます。陰陽ではさらに分けることができるので、心・肺を陰陽で分類すると心が陽、肺が陰、肝・腎を陰陽で分類すると肝は陽、腎は陰になります。
残った脾ですが、脾自体は肌肉ということで身体の腹部内や身体の肉ということで考えることが出来るので、構造として至陰という表現を用いたのではないかと考えられます。構造は機能と違い陰になるので、身体自体を脾という言葉で考えたのではないかと思います。
2.性質からわける陰陽
臓の性質から陰陽を分ける場合に重要になるのが、五行の性質になります。五行の性質は、
- 木:曲直
- 火:炎上
- 土:稼穡
- 金:従革
- 水:潤下
になるのですが、曲直は昇発ということで上昇しやすい性質があり、炎上は言葉通り、上昇する性質があるので、木・火は陽になります。従革は物が出来あがっていくことを示し、縮む性質があるので陰、潤下は冷えると下がると言う意味があるので陰になります。
脾の稼穡は収穫するという意味が入るので、物が形成されていくので陰の性質が強いと考えられ、先ほどと同じように陰陽の分類をしてみると、
- 陰中の陽:肺
- 陰中の陰:腎
- 陽中の陽:心
- 陽中の陰:肝
- 至陰:脾
に変わっていきます。肺・腎は水に大きく関係する臓であり、その中でも水との関わりが深いのが腎になるので、腎を陰中の陰にすることができます。昇る性質を持つ心・肝は心の方が昇る性質が強いので陽中の陽にできます。
3.まとめ
位置と性質で考えると、陰陽の分類が変化してしまいますが、陰陽論は相対的に考えるものなので、考え方次第では臓の陰陽分類は変化することができます。
学習した時は、こういったことは考えることがなかったのですが、今まで臨床で東洋医学を考えてみて、こういった分類の違いを自分で考えることも大切かなと思います。
東洋医学を学習していくと、考え方が違うことなどが出てきますが、これは五行の分類は歴史によっても違いがあるので、いろいろな解釈できる点でもあります。ただ、歴史を重ねて現在のようになっているので、そこまでさかのぼって考えなくてもいいのかなとも思います。
ただ、気になって調べたりはしてしまうのですけどね。