症例4_解説と治療

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 症例4の解説と治療です。しびれと下腿のつりから肝血虚による皺状と考えることが出来ます。高齢な方では下腿のつりが生じやすいですが、血虚が生じていると考えられる指標なので、どのような状態なのかを把握するのに大切な情報です。

1.解説

 左下肢のしびれが続いているということで、神経支配領域を知っておくことが必要なのですが、位置的には坐骨神経の走行とも関係しやすいので、坐骨神経は下部腰神経・仙骨神経叢からきているので、腰仙部の問題と考えることもできます。

 

 坐骨神経痛と言われたとのことですが、気をつけておきたいのは、「どこで」言われたのかを確認しておくといいです。病院の場合もあるのですが、近所の整骨院・整体院で言われたというのは診断結果としては適切ではないこともあるので、再確認をすることが必要です。

 

 病名を決定して伝えられるのは医師の職域で他の医療職は「考えられる」という程度の話し方が一般的ですが、患者さん自身も自分に分かる言葉だけを記憶にとどめてしまうので、診断結果だけではなく、患者さんのバイアスも入るので余計に注意が必要になります。

 

 食欲などは通常なので大丈夫そうですが、腰の痛みに関しては寝起きが辛く、その後は問題がないということなので、椎間関節の変性が生じてきているのかもしれないと考えることが出来ます。

 

 膝の痛みは骨性の痛みであれば腎ですが、靱帯・筋の問題であれば、肝と考えることが出来るので、病態の把握として関節の変形と靱帯・筋は必ず確認をしておくといいと思います。

 

 夜中に起きるということですが、血虚では入眠困難も生じますが、中途覚醒もあるので、尿意で起きるのか、その前に起きるのかを確認しておくと、中途覚醒かどうかの判断をしやすくなります。

 

 血虚では他には代表的な症状としては、便秘があり、便の形状が兎糞のようで硬いと言われるので、確認をしておくといいです。

 

2.治療

 坐骨神経痛に対しての治療は効果的だと言われるのは、

  • 腹部の硬結を緩める(局所施術)
  • 坐骨神経に鍼通電療法
  • 神経痛しびれが生じているところに透熱灸

がありますが、腹部を緩めるのに、刺激が大丈夫であれば、硬結があるところに、1~2cm刺入するといいです。鍼の本数は拘らないで、圧痛があるところに刺入するのもいいと思います。

 

 坐骨神経に対しての鍼通電療法は、私自身も刺鍼でなかなか効果がなかった人に対して行ったところ、急激によくなっていった経験があります。

 

 透熱灸は熱さを感じるぐらいのもので、小さく火傷をさせるぐらいの刺激がいいということなのですが、火傷は嫌がられることもあるので、火傷させないように治療で使ったこともあります。お灸は痛みに対して効果が見られることが多いです。

 

 下腿がつりやすいということに関しては、合陽、承筋、承山などに5mm~1cm刺入をして10分程度おくだけでも効果が見られることが多いです。

 

 しびれは治療後すぐになくなることもあるのですが、最終的に気にならなくなるまで消失するのには時間がかかる傾向があると思います。しびれが消えていくのは、症状が出始めたところが最後まで残ることが多いです。

 

 足のしびれだと、井~兪穴までの末端部の経穴も効果が高いので、よく使いますが、切皮痛と刺入での響きが出やすいところなので、切皮~5mm程度の刺入にするといいと思います。

 

 肝血不足に対しては、太衝、血海を使うと効果が高いところですし、血海は皮膚面からの直刺がいいので、イメージとしては、血海から大腿骨に向けて刺入をすると効果が見られやすい傾向があります。刺入深度は2cmぐらいではないでしょうか。

 

 血不足があるので、血の生成を考えるのであれば膈兪や脾胃を使うのがいいので、胃の六つ灸である。膈兪・肝兪・脾兪であれば使いやすいのではないかと思います。

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