合谷は、手にあるツボで自分でも揉みやすいし、治療においても使いやすいので多くの方が使っているツボの一つだと思いますが、合谷の作用と鍼灸の使い方について書いてみます。
合谷は手陽明大腸経の原穴にもなるので、大腸に対する治療、経脈に対する治療に効果があります。経脈に対する治療として言われるのは、歯痛に合谷と言われますが、手陽明大腸経は下歯に走行しているので、歯の治療に効果があるのですが、痛みが強い場合は偏歴や温溜の方がより効果が出ることがあります。
大腸経は顔面部に走行しているので、四総穴で面口に効果があるということで顔面部に症状があるときに用いられやすいツボになります。陽明経は顔面だけではなく前頭部とも関係するので頭痛があるときにも合谷は使えますね。
合谷の部位は、虎の口に似ていることから虎口と呼ばれることがあります。
外邪の治療においても使いやすいところで、風邪の引きはじめや風邪の諸症状にたいして用いられることがあります。大腸は肺の表裏関係なので、風邪は肺の病証として考えることが出来るので、表裏の合谷は効果が出やすい場所とも言われます。
合谷を刺激することにより、肺の機能を活発にするのですが、それ以外にも大腸を刺激して、身体の中に阻滞している濁気を便として排出する働きがあります。大腸は消化器に属するので、脾胃の働きを強めるときにも効果が見られるので、足三里と組み合わせて用いられることもあります。
気血津液への働きで考えると、気に対する作用が強いツボと言われるので、気虚や気滞の時にも用いることが出来ます。
ここまで考えると合谷だけでも治療が出来るのではないかと思えますが、血への働きかけは少し弱いと言えますが、脾胃を助ける目的で用いれば血を補う働きもでます。
経穴の作用は経験や経脈、表裏に対する知識があるとどのようにでも使うことが出来るのですが、自分の中でどういう目的で使ったのかを覚えておくのが経験を積んでいくコツになると思います。
合谷を揉んだり、鍼をすると発汗をすることがありますが、気の阻滞がしやすい方は、発汗しやすい傾向があるので、合谷付近に少し圧を加えてこすったり、揉んだりしてみると気滞があるかどうかの鑑別にもなります。
合谷への刺入基礎は後渓へ向けて刺入するのが直刺になります。刺入しやすい状態は、小指球がベッドについた状態で合谷を上にすると刺入がしやすくなります。5~1㎝で強いひびきが生じやすいので、刺入していくときに、硬い硬結に当ったら刺入を止めるようすると強いひびきが出なくてすみます。
刺入方向を母指に向けると母指にひびきが出やすいので母指の症状がある方には、刺入方向を変えるのも効果的です。示指の指先に向けて刺入していくと、示指やその他の指にひびきがでることが多いです。
手関節の方向に向けて斜刺を行うと、胸や上腕の方にひびきが出やすいので呼吸器系の症状がある方にはおすすめです。お灸は上手に行うと労宮に向けて熱が浸透しやすく、手の冷えがある方に効果的です。
合谷に鍼を切皮・刺入すると躍動ができるときがありますが、躍動が出たらその部位で止めるといいです。躍動だけならひびきが残りづらいのですが、何度も躍動を起こしたりすると鍼の違和感が生じやすいですね。