五臓の説明を一つ一つしていますが、今回は肺の働きについて書いてみます。肺の働きも他と同じように五行の性質や陰陽で働きを説明できるので、その辺りを中心に書いていきます。
肺は五行では金に属するので、金は従革と言われて、人の手によって形を変えていく様子から清潔や収斂、下降、縮むという性質が与えられています。肺の生理機能で重要なのは呼吸活動になるのですが呼吸活動は陰陽で分けて考えることが出来ます。
呼吸は呼と吸に分けられ、呼は外側に向かう働きなので陽、吸は身体の中に取り込む働きなので陰になります。つまり、肺の働きは陰陽の活動があるのが正常な状態と言えます。
五行の性質から考えると従革に近いのは粛降と考えることが出来るので、肺の機能としては粛降が重要になり、粛降の働きがダメになってしまった状態が咳という症状になります。
肺は何のために呼吸をしているかと言えば、天の気を取り入れるためなのですが、それだけだと具体化しないので、肺は呼吸をすることによって宗気を生成すると言われます。
宗気は身体機能と関わるので、肺の機能がしっかりしていれば宣発・粛降が働き、宗気が生成できるので、活動が出来る状態になります。息切れがしやすい人は身体を多く動かすことができないですよね。
呼吸は胸膈・腹式で分かれて行われますが、よく観察してみると呼吸は身体の動きとしては、非常に大きなものです。患者さんを治療していて、辛い症状の方は呼吸が浅い人が多いですが、治療後は呼吸を深くすることができるのは日常でも分かります。
これだけ大きな活動をしているので、気との関係が深いので、宗気の生成という役割が与えられているのだと思います。呼吸活動は他に何に影響を与えているかといえば、身体の中の水の運行に関係をしています。
この水を全身に輸送する働きは宣発と粛降がメインになるのですが、働きとしては通調水道と呼ばれています。身体の水分調節は、脾が生成、肺が輸送、腎が排泄ということでそれぞれに機能を分けていますが、水分調節以上の浮腫みは、この3臓の機能低下で生じやすいです。
肺の働きには、百脈と関係するというのがあるのですが、これは肺から経脈が始まり、肺に接続するという考え方をもとにしていると言われます。
肺の宣発という働きは、皮毛や衛気にも関係をするので、外邪に対する抵抗力として考えることができます。粛降は身体の中に対する下に向かう力であり、呼吸道を清潔に保ち、排泄に関係していきます。
肺の表裏は大腸なので粛降の働きが正常に機能すると、大腸の伝導がスムーズになるので、排便がスムーズになっていきます。便秘がちの人は普段から深呼吸をすると排便しやすくなりますが、これは肺の粛降を高めていると考えられます。