全てを見通す治療家になるには

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「昨日、何かあったのではないですか?」

「いや、昨日は家にいたので何もなかったです。」

 

「いや、この1週間で絶対に何かあったはずですよ。」

 

「この1週間ですか。」

 

「そうです。」

 

「そういえば、3日前に仕事がいつもより忙しかったぐらいですね。」

 

「それです!!」

 

「何か関係があるのですか?」

 

「嫌な気分になりませんでしたか?」

 

「そうですね、少し嫌な気分にはなりましたが、関係するのですかね。」

 

「します!周囲に対してイライラしたりしませんでしたか?」

 

「ん~、全くない訳ではないですけど、少しはあったかもしれないです。」

 

「その感情の揺れが身体に影響を及ぼして腰痛になったのですよ。」

 

「そうだったのですか、言われてみればその次の日から違和感があったような気がします。」

 

この治療者は凄いのでしょうか?

 

 

 

「この腰痛の痛みが出るのは、おそらく感情の問題が考えられるのですが、その場合だと数日前に何か普段と違う状態があったと思うのですが、いかかでしょうか?」

 

「数日前ですか?そういえば、数日前に仕事で忙しいときがあって疲れたと思いました。」

 

「おそらく、仕事で長時間座っていたのもあるでしょうし、その次の日ぐらいから腰に違和感が出たのだと思うのですが、いかがでしたか?」

 

「そういえば、次の日に起きたときに腰に違和感がありました。」

 

この治療者は凄いのでしょうか?

 

 

 

 何が言いたかったのかと言うと、最初のケースでは治療者は具体的なことを一つも話していないですが、欲しい情報を引き出したとも言えます。

 

 問診テクニックとも考えられますが、これはコールドリーディングという手法でもあります。コールドリーディングを使う会話だと、

 

「あなたの運勢を妨げているのは年上の人です。あなたの周りで年上の方で気になっている人がいるはずですが、心辺りはありませんか?男性かな、女性かな。」

 

「年上ですか?社内では年上の人が少ないのですが、気がかりなのは母親の調子が少し悪いところですかね。」

 

「それです!!母親です!!」

 

という話しが続くのがコールドリーディングを使った手法であり、会話の手法として用いられています。質問者はほとんど話しをしていないのに、相手側が自分で話し、それで納得をして、相手が凄いと感じてしまうことがあり、利用の仕方によっては効果を強く発揮します。

 

 私自身は、使っていないですが、問診の考え方でも似ているので近いことは行っています。質問の仕方にはオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンがあり、クローズドクエスチョンはイエス・ノーで答える質問です。

 

 例えば、

オープン→「痛みはどのような感じですか?」

※文章で答える

クローズド→「痛みはありますか?」

※はい・いいえで答えられる

 

 問診の中では、患者さんがどのように考えているのか、生活、思考などを知る上で、オープンも使いながら、聞きたいことがあれば、クローズドで質問をします。日常生活でも会話の中では使っていますが、意識をすることによって、何を聞きたいのかがはっきりします。

 

 私自身は全てが分かるという人と会ったときには、相手がコールドリーディングを使っているのかどうかを判断するために、逆に質問をすることがあります。

 

「昨日、何かあったのではないですか?」

 

「何かとは何ですか?」

 

「えっと、感情、仕事、ストレス、食事とか・・・。」

 

「どれですか?」

 

と相手に何が分かるのかを確認するようにしています。手法として理解して使っている方もいるでしょうが、自然と使っていて、それがその人の手法になっているのであれば、分かるではなく引き出すのが上手いと考えます。

 

 コールドリーディングを使うのに、騙していなければ悪いことではないですし、相手が吐きだして満足するのであれば、使う価値があるのではないでしょうか。日々の問診の中で断定しきれないものがあったときに使うと相手側が話しをしてくれますしね。

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