奇恒の腑の働き

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 東洋医学では、内臓を臓と腑に分けていますが、臓と腑に該当しない例外を奇恒の腑と呼びます。臓・腑・奇恒の腑はそれぞれ6つあります。

 奇恒の腑は、骨、髄、脳、脈、胆、女子胞があり、気血津液精や臓腑と関係すると言われています。奇恒の腑は身体に取って大切なものになるので、それぞれの役割も重要視されています。

 

 骨の中には髄があり、髄が集まったものを脳(髄海、元神の府)と呼ぶので、この3つは相互に関係が深いとされます。骨は立つ力と関係をするので、骨がもろくなると骨折だけではなく、たっていられないぐらいだるいという状態になってしまいます。

 

 髄は骨を栄養するものであり、髄が充実していれば骨も丈夫になり、髄海の働きも正常になります。髄が不足をすれば髄海が不足してしまい、健忘が生じます。五主・五体という五行の分類で、骨と髄は水に該当するので、腎との関係が深いです。

 

 腎は精が充実して機能をすることから、骨・髄・髄海は腎精の影響を強く受けるので、腎の働きが低下してしまうと、髄不足から骨の軟弱、髄海の異常である健忘が現れてしまいます。

 

 骨の異常は大杼、髄の異常は懸鐘で治療ができるので、髄海に対する治療では懸鐘を使えるともいえます。精の不足によって生じているのであれば、精血は相互に補完し合う関係があるので、血会である膈兪も髄海の治療として使えます。

 

 脈は営気と血が流れているところであり、全身の栄養を送り、さらに情報を伝達する場所という考えがあります。脈の働きは、固摂と推動と考えることが出来るのですが、固摂は脾の統血によって成立し、推動は心の主血によって成立しています。

 

 脈の異常は、血の病証として考えることもできるのですが、脈会である太淵を用いれば脈の治療にもつながります。

 

 胆は腑のところでも説明をしましたが、六腑の一つであると同時に奇恒の腑と言われます。六腑は食物・水の消化・吸収・排泄と関係をし、一時的に物を貯めるだけの働きなのですが、胆は胆汁を貯め続けているということから奇恒の腑とも言われます。

 

 胆の障害は胆汁と大きく関係をしやすいので、口が苦く感じる口苦が発生をしやすくなります。胆の問題は肝の働きの障害によっても発症することがあります。

 

 最後に残ったのが女子胞ですが、この女子胞に関しては月経のメカニズムのときにも書いたのですが、血が十分に流れてくることが必要で、生殖機能になるので、腎精の働きが充実し、天癸が生じることによって生殖機能が生じます。

 

 経脈とも関係をしやすいのですが、肝経は生殖器へ流注しているので、肝経で治療を行うことができるのですが、奇経の督脈・任脈・衝脈は女子胞から走行をしていると考えるので、この3つの奇経が重要になってきます。

 

 治療で用いるときには、督脈・任脈・衝脈の八脈交会穴を使うことが多いので、後渓・列欠・公孫が重要になってきます。女子胞は、妊娠時以外では血を納めておき、妊娠中は胎児をとどめておくので、固摂作用が強いと言えます。

 

 男性生殖器についての話は精室と言われ、女子胞のような具体的な器官がないですが、イメージとして存在しています。

 

 奇恒の腑は、臓腑の働きや臓腑の病との関連の中で出てくることがあるので、身体の働きを理解しておくためには重要になります。

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