鍼治療ではツボを決めるのも知識や経験が必要になりますが、その後、どれぐらいの長さと太さの鍼を使って、どれぐらいの深さに刺入をするのかは悩むところになります。
鍼を刺入する際に私が注意をしているのは、鍼を刺す深さは鍼体の半分と決めています。寸3の鍼であれば2㎝、寸6の鍼であれば2.5㎝にしています。
体動してしまって鍼が抜けなくなってしまっときに、鍼柄ぎりぎりまで刺入をしていると抜鍼が困難になり、折鍼をしてしまうリスクが上がるので、使う鍼でどこまで刺入するのかは厳密に管理をしています。
使う鍼の太さや長さに関しては、2㎝程度刺入する可能性があるのであれば、太さは最低でも2番で、3番か5番を選択するようにしています。
身体は筋層が何層にもなって存在しているので、深く刺入をしていけば、体動があれば様々な方向から鍼体に力が加わってしまって、鍼がグニャグニャに曲がってしまうので、出来るだけ太い鍼を使うようにしています。
鍼の長さは刺入する深さで代えていくのですが、殿部や腰部では、出来るだけ長い鍼を使うようにしているので、最低でも寸6、通常は2寸を使うことが多いです。
このように部位によって鍼の太さや長さを決定することが多いのですが、実際に刺入したときにどこで鍼を止めるかは、狙った筋肉がある場合は、その筋層に到達したところまでを目安にしています。
東洋医学的に用いる場合、筋肉を意識しないときには、刺入をしていったときに、抵抗があるところで刺入を止めます。抵抗がある部位に鍼が到達すると、鍼先が釣り針のように、何かに食いつく感じがあるのでそこで止めることが多いです。
刺入した先に、空虚感がある場合は、そこが充実してくるのを待つので、鍼を刺入したときに空虚感を強く感じるところで鍼を止めます。
鍼が食いつく感じや空虚感に関しては、日々、鍼先がどのような感じなのかを感じながら刺入をしていくことが大切です。
料理人であれば食材に触ったときに、違和感を感じ、包丁を入れて、駄目かどうかの感覚を大切にしているので、鍼灸も同じものだと考えることが必要だと思います。
私は食いつく感じ、空虚感も卒業してから感じるのは大変でしたが、学生時代にたまたま食いつく感じを体験することが出来たので、卒業してからもその感覚を指標にしています。
切皮置鍼で治療を行うのであれば、刺入することは必要ないので、短くて細い鍼でもいいと思いますが、切皮置鍼でも太い鍼の方が効果的なときもあるので、いろいろな鍼を使い慣れるようにした方がいいと思います。
私は自分の身体に対しても様々な鍼を試しますし、患者さんでも必要であれば様々な鍼を使っています。