鍼のひびきとは、鍼を皮膚に当てたときや刺入したときに感じる感覚のことを言うことがあり、得気とも言われます。
教科書と中医学ではひびき(響き)のことを酸・脹・重・麻があるとされ、これに痛を加える書籍もあります。
酸は鍼による感覚がだるいと感じるものであり、何となくだるい感じになります。脹は張ったような感覚であり、鍼を刺入したところで風船がふくらむようなイメージが該当すると思います。重はそのままですが、鍼を刺入した部位が重く感じるものになり、麻は鍼を刺入したところがしびれた感覚が生じたものを言います。痛は痛みとして感じるというものです。
患者さんによっては、鍼のひびきが好き・嫌いな人に分かれるので、ひびきが好きなひとは、どの感覚がきても大丈夫ですが、好きな感覚はあると思います。私は弱くジーンとしびれるような感覚の方が好きで、だるい・はれる・おもいはあまり好きではないと思います。
嫌いな人に取っては、ひびきが生じれば、それは痛み以外の何物でもないので、「鍼は嫌い」「鍼の感覚が嫌い」と表現されることが多いと思います。
鍼灸師でも鍼のひびきが嫌いな人は多いですね。ひびきが嫌いだけど人に鍼を行うときには、雀啄を使って刺激やひびきを出すという人もいるので、相手の状況や身体を考えて行うのは大切ではないかと思います。もちろん、ひびきが嫌いだからひびきは出さないという人もいますよね。
ひびき好きな鍼灸師は、どんどんひびかせることがあるので、治療の刺激としては強く感じることも多いですね。
中国のひびきは、言語化された表現として教科書にも使われているのですが、日本の流派で行う治療では、これとちょっと違ったひびきがあるのではないかと思います。
何と言えばいいのかは分かりませんが、鍼を刺入したところから広がっていくように「ジワ」感じて、「ジワジワ」してきて、経脈の走行に沿っていったり、円が広がったりするような感覚が生じることがあると思います。
鍼を刺入したところだ「ジワジワ」と「温める」感覚が生じることもあるので、温泉に入っているようで気持ちがよい感じになることがあります。
もちろん、技術的な要素もあると思うのですが、私はいろいろやってみたいということで、自分に対して、どのような鍼をすれば、ひびきが出るのかを研究している状態です。
傾向としては浅く、または刺入しているときに何も感じないようにしたときに「ジワジワ」くるようなひびきが生じやすく、硬結に対してや深く、またはひびきを出させようとしているときには中医学のようなひびきになりやすいのかなと思っています。
ひびきが嫌いな方に取っては、嫌がられることがあるので、「ジワジワ」と感じるようなひびきを目指して鍼を行うことがあります。この「ジワジワ」が他の部位の「ジワジワ」と繋がって、包まれているように感じると独特な感じになることもあります。