吸角は昔からある療法だとされていて、鍼灸師だけではなく、リラクゼーションやエステでもよく用いられていますが、どんな効果があるのでしょうか?
吸角は「きゅうかく」と言われますが、「吸い玉」「カッピング」「抜罐(ばっかん)」と呼ばれるものもほとんど同じです。使用する人によって名前が変わることがありますが、やっていることは一緒ですね。
吸角は真空にした吸角を皮膚に密着させることによって、皮膚面に対して治療を行うのですが、皮膚を吸引することによって、皮下の動静脈、リンパ、筋肉に対して効果があると言われています。
東洋医学的に考えたらどのような効果があるかというのをもう少し考えてみたいと思うのですが、筋・動静脈・リンパに対しての影響があるのも確かですが、基本的には皮膚面に対して行っていくので、皮膚、皮毛に対しての治療効果が高いと考えられます。
皮毛は五行では金に属し、肺と関係するので肺の病証のときに用いられやすいといえます。肺の病証は一般的には風邪の症状とも考えられるので、風邪症状に効果があると言えます。
風邪症状は、悪寒・発熱、背中や首の違和感がありますが、こういった症状には劇的な効果を見せることがあります。私も風邪のひき始めのときには、上背部に吸角を使うことがあります。
風邪は風寒の外邪によって発症することが多いのですが、風が体表を守る衛気の働きを阻害してしまうので、皮毛が外界にさらされやすくなります。その隙に、寒邪を一緒に連れてきてしまって、皮毛つまり身体に影響を与えてしまった状態が一般的な風邪と考えられます。
寒は凝滞性・収引性という働きがあり、収引性は皮毛を収縮させてしまい、腠理を閉じ、汗が出ない状態を作ってしまいますが、吸角を用いることにより、吸角に皮膚を吸いこみ、皮毛を伸ばすので、収引性の働きを取り除きます。
風邪は身体の表側に影響を与えたときに発症しやすいので、表証とも呼ばれます。吸角の効能では表証に対する効果が書かれているので、風邪に対しては効果的になります。
「吸角をすると皮膚が青紫になるのは身体が悪い証拠だ。」
と言われますが、吸角をした後に、皮膚色が青紫色に変化をしてしまうので、そこに瘀血(おけつ)が停滞しているからだと考えることがあります。瘀血が発生しているのを体表面に浮きださせ、外へ排出するというイメージが吸角にあります。
吸角を継続していくと、この痕が残らないようになっていくので、その効果の説明を瘀血という用語を使ったと思います。
風邪や瘀血以外で効果がみられるのは、皮膚が張っている人になります。もう少し具体的に言うと、皮膚をひっぱる、つねるという動作をしようとしたときに、皮膚に動きが悪い人は、皮毛の動きが低下しているので、吸角をすることによって皮膚の動きが出るので、様々な効果が出ることがあります。
皮膚は身体を一枚の布で覆っているものになりますが、皮膚の可動性は実は高いので、皮膚の可動性が低下すると、様々なところの動きが低下をしてしまいます。マンガの『仁』でも江戸時代にタイムスリップをした主人公が背部に傷が生じてしまい、手先が動かしづらくなったというシーンがありますが、皮膚の可動性は全身に影響を与えてしまいます。
例えば、脾兪の辺りの皮膚可動性が低下していれば、脾の働きの低下、つまり消化器の問題が生じていることがあるので、そういった方の脾兪に吸角をすれば、臓腑に対しての治療としても使えます。
吸角は鍼灸と同様、応用範囲が広いですが、治療者側がしっかりと考え、体表観察を行っていくことが大切になります。
吸角は背部に使われることが多いのですが、四肢、お腹、頚部にも使っていくことができますが、頚部に痕が残ると目立つので、使われることが少ないです。お腹に吸角をすると効果も高いのですが、背部のような気持ちよさが出ないので、治療として使うのにはいいと思います。
吸角を少し弱めに用いて、オイルを使って吸角を動かす方法は、「走罐法(そうかんほう)」と言いますが、これがエステなどでは使われることが多いものだと思います。走罐法は、やられていて気持ちがいいので、使うと喜ばれることが多いですね。