督脈

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 督脈は他の経絡の基準となるところなので、学校でも最初の方に習うのだと思いますが、経穴の勉強をするときに最初から学習をすると督脈は初めにくるので、何度も見返すことが多いところだと思います。

 督脈は、背中の中心に走行しているので、背中は陽と考えることができるので、陽脈の海と言われます。表は陽なので、陽が強いという表現にもなりますね。

 

 督脈は陽気が強いところなので、お灸で陽気を補うという方法もあります。透熱灸だけではなくて、知熱灸や棒灸で温めたるという治療法が行われやすいです。

 

 鍼を刺入しようとしても、仙骨、脊椎、頭蓋骨があるので、刺入は難しいと思います。刺入が難しくても督脈に沿ってや逆らって水平刺では刺入することができるので、私は上背部の督脈上に上から下に向かって水平刺をすることが多いです。

 

 督脈は顔面部にも流注をしているので、督脈に刺激を加えることによって顔面部の疾患に対しても対処することができます。百会のときでも目・鼻疾患に効果があるという話をお書きましたが、この考え方は督脈の経穴全部に通じます。

 

 督脈は腰背中に流注しているので、背中の痛み、腰部の痛みにも使うことができます。督脈の頭部での流注は脳に入るので、脳に対しても効果的だとされています。脳の疾患と言うことで脳血管疾患や認知証に対して効果があると考えられます。

 

 背中や腰の痛みと言うと、ぎっくり腰やぎっくり背中、寝違えなどがあるので、そういった治療で督脈を使うことができます。百会から治療することもできるのですが、督脈の八脈交会穴である後渓を用いることによって遠隔からでも治療をすることができます。

 

 動作時痛があれば、後渓を指で圧迫するだけでも変化がみられることがあるので、急性で局所への対処が怖い場合にはかなり効果的になります。

 

 背部の脊柱には臓腑が付着するという考え方もあるので、臓腑の背部兪穴がある高さの脊椎は臓腑に対してもアプローチできるので、ツボの横並びは覚えておく方がいいですね。

 

 督脈と走行が似ているものが膀胱経になるので、膀胱経の治療としても督脈を使っていくことができます。教科書で学ぶ内容で奇經八脈病証があると思いますが、この内容も覚えておくと督脈を使いやすいと思います。

 

 督脈の病証は「背中、頭痛、痔、足の冷えと痛み、腹部から胸の不快感や痛み、むくみ、排尿障害、不妊」があるので、痔の場合や冷えのときにも督脈を使っていくことができます。

 

 足の冷えときたら、局所以外に何を使おうかと考えるかと思いますが、督脈から出来ると思えば、治療内容の幅が広がっていくことになると思います。絡穴は長強が入るのですが、さすがに長強は場所的にも使いずらいので、使っている人は少ないのではないかと思います。

 

 こういった病証の話は『難経』二十九難に書かれています。

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