奇経八脈の続きは任脈にいきます。任脈も身体の前面中央にあるので、他の経穴を取穴する際に基準になるところなので、最初に学習することが多く、頭に残りやすいところだと思います。
任脈は、身体の前側の中心に走行しているので、身体の前は陰ということで陰と関係が深いところになります。陰脈の海と呼ばれています。身体の陰に関係が深いので陰が強いと考えることができます。
鍼を刺入しようとした場合、胸骨上は皮下がすぐに骨になるので、刺入するのは難しいですが、腹部は皮下に骨がないので刺入しやすい場所になります。下腹部は原気と関係しやすいと考えられるので、精を充実させたりする機能が高いと言われます。
下腹部では脾・腎・肝経が交わると言われているので、原気との関係だけではなく、陰経との関わりが強いと考えられます。下腹部に鍼灸を行い続けることによって、体調がよくなることが多いので、保健として考えて日々、自分に行うといい場所です。
気海や関元付近に刺入をすると、両下肢前面にひびきが生じることが多いのですが、これは足の三陰経の走行と関係が深いからだと考えられます。透熱灸を行っていくと、足の三陰経に温かさが広がり、足の冷えが改善しやすくなります。
中脘は胃の募穴であり、胃への働きかけが強い場所になり、治療においては大切なところなのですが、刺激が強いと胃の働きを障害してしまうことがあります。私は自分の中脘に透熱灸を行っていて、気持ちがいいので、多壮灸を行ってみたところ、その後はしゃっくりが止まらなくなりました。
胃は腑で陽ですが、湿を好む性質があるので、熱を加えたことによって胃陰の障害をお越し、胃気上逆である吃逆が発生したのだろうと思います。
鍼でも刺激が強すぎた場合は、胃部不快感は悪心が発生しやすいところなので、刺激強度は注意をした方がいいと思います。胸骨上の経穴も治療効果が高いところなのですが、異性に対しては使いづらいところになりますね。
天突は咳や痰があるときに効果が高いので治療に使いやすいところだと思いますが、深くは刺入しないようにした方がいいです。任脈のイメージとしては、下腹部は下焦の治療、上腹部は中焦の治療、胸部は上焦の治療として考えると、具体的なツボを覚えて施術しなくても出来るので便利だと思います。
任脈の病証は「腹部の皮膚異常、月経、帯下(おりもの)、疝気」と言われますが、疝気は寒邪の収引性により下腹部から睾丸にかけてのひきつりになります。
病証として考えると腹部の問題以外は生殖器との関わりが多いので生殖器疾患には必須の経脈と言えます。
絡穴は鳩尾になるのですが、鳩尾の部位はみぞおちとも言われ、ぶつけると息が止まり、苦しいところなので、治療効果も高いのですが、刺激量を考えないと、苦しい思いをすることがあります。
人によって、剣状突起の大きさも違い、剣状突起を強く刺激してしまえば、骨膜炎を生じてしまうことがあるので注意が必要です。