腹脹について考える

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 腹脹はお腹が張ってしまった状態のことを言い、脾の病証として考えることができますが、肝の病証も考えることができます。

 お腹が張って苦しいのは食べ過ぎたときに生じるのが一番多いと思います。誰でも食べ過ぎてしまったという経験があると思いますが、この状態は胃の受納機能を超えて摂取をしてしまったことによる腹脹になります。

 

 食べ過ぎ以外で腹脹が出る場合は、脾・肝から発生する病証として2つに分けられます。

 

 脾の病証で、腹脹が生じる場合は、消化吸収の働きが低下をしているので、食後に腹脹になります。脾が弱っていて、3/10しか処理する能力がないときに、5/10の物が入ってきてしまえば、2/10を処理できないですよね。

 

 この場合は、処理能力に問題があるので、食べる量が少なくても腹脹が発生することがあります。暴飲暴食や疲れで胃腸が疲れてしまっているときは、少ない量でもお腹いっぱいに感じるのは脾の働きの低下によります。

 

 労逸は労倦と安逸になりますが、動く・動かないは身体の運動にも関係し、四肢を使っている・使っていないに関係するので、脾の働きと大きく関わります。運動も過ぎれば、食欲が低下するし、寝ているだけだとお腹が空かないのは、労逸により脾の働きを損傷していると言えます。

 

 この時には、腹脹が発生しやすいので、どんなときに腹脹が出やすいのかを考えるだけでも脾の病証かどうかを判断することができます。

 

 肝の病証として発生する腹脹は、慢性的な傾向があります。この腹脹では、気滞と関係することが多いです。ストレスによって感情を抑えつづける状態が続くと、情志を抑圧してしまうので、肝の生理的な機能である、昇りやすい曲直の働きが低下をしてしまいます。

 

 この状態を気滞、気うつ、肝うつ、肝うつ気滞というのですが、上に成長する力を押さえつけられてしまっているので、横や下方に影響が生じやすくなります。例えば、草木で成長が早いものがあった場合に、上に伸びてこないように板をおけば、横や下方に一度行ってから上を探すというのが分かると思います。

 

 肝は木の性質があるので、草木のようにどこまでも浸食していく力があります。上に昇り切れない状態になると、横にも行くので、お腹がどんどんと膨らむような感じになり、慢性的な腹脹として感じます。

 

 イメージとしては、風船がどんどんと膨らんでいく感じになります。風船も膨らませていけば、破裂をするしかなくなりますが、人間だとどうなるかと言うと、さすがに割れる訳にはいかないので、どこかから出すしかなくなります。

 

 人の身体では上下に通じる穴があり、そこは外界と通じているので、上下の穴から停滞している力つまり気を排出していきます。

 

 この2つの穴が、口と肛門になります。肛門は東洋医学では、魄門と呼ばれ、二陰の一つである後陰とも呼ばれます。口と肛門から何が出てくるかといえば、ガスが出ることによって、ふくらんでしまった風船をしぼませていきます。

 

 口から出る物が太息(嘆息)というため息になります。ストレスがたまると情志が抑うつしてしまい、肝の昇発の働きが停滞し、気機が阻滞するので、阻滞した気を口から出すということですね。

 

 ストレスがあるとため息が出るというメカニズムは、肝気のうっ滞が関係していると言えます。

 

 肛門から出るのは、失気というおならになります。お腹が張っているときにおならが出ると楽になりますが、これは気機の阻滞が改善をされるからになります。

 

 脾の働きが低下をしてしまったときにも失気が出ることがありますが、肝の問題から生じる腹脹は気機が阻滞し続けてしまっているので、下から出すだけではなく、使いやすい口から出るとも考えられます。

 

 脾でも肝でも排便をすると腹脹が楽になるのは一緒ですが、脾は食事を食べなければ悪化しないのに対して、肝は食事に関係なく悪化をしてしまいます。

 

 もちろん、肝の疏泄と言う働きは、脾の働きとも関係するので、肝の病態から脾の病態まで波及をしてしまうことがあり、その場合は慢性的な腹脹があり、食後はさらに辛くなってしまいます。

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