気逆という考え方

Pocket

 気の病能は気の不足である気虚、気の実証である気滞、気虚が進行した気陥と気脱がありますが、気逆という考え方があります。

 気逆は、簡単に考えると「気の働きがおかしくなった状態」のことを言い、明確な病証を示す訳ではありません。気逆を起こす臓腑は肝・肺・胃になります。他の臓腑では気逆という表現を使うことがないのが特徴になります。

 

 何故、この3つだけなのかと言えば症状に特徴があるから付けられていると考えられます。この3つは、身体の気の働きで言えば上下に運行する昇降と関係が深いので、気逆によって特徴的な症状が発生します。

 

 気逆と臓腑を組み合わせると、肝気上逆、肺気上逆、胃気上逆とよばれ、気逆という言葉から上逆という言葉に変わります。逆は「気の働きがダメになってしまったこと」であり、上は上に症状が出ると言うことになります。

 

 肝気上逆で生じやすい症状は、頭痛と眩暈であり、頭部に症状が多くでます。肝は昇発という働きがあるので、肝の働きに障害が発生してしまえば、昇りやすい性質があるので、身体の上部である頭部の症状が発生しやすくなります。

 

 肺気上逆で生じやすい症状は、咳嗽になり、身体の中から外へ、身体の下方から上方へ空気が出てしまう状態になります。肺の働きは、収斂とも関係をし、下へ下す粛降という働きがあるのですが、肺の働きが障害してしまうと、降ろすことが出来ないので、昇ってしまうことになります。

 

 胃気上逆で生じやすい症状は、悪心、嘔吐、呃逆(しゃっくり)、噫気(げっぷ)であり、身体の中から外へ、身体の下方から上方へ押しだされてしまう状態になります。胃は通降という働きがあり、下に降ろすのですが、胃の働きが障害してしまうと降りることができないので、昇ってしまいます。

 

 肺は呼吸と関係するので、呼吸器系の症状である咳嗽が生じやすくなります。胃は受納・腐熟という食事と関係をしやすいので、消化器と関わるようなゲップ、しゃっくり、吐き気が生じやすくなります。

 

 肝に関しては、臓腑の生理機能というよりも昇発の働きが強くなってしまうのと、ストレスで肝気の障害が発生すると、頭痛が生じてくるという現象から考えたのだと思います。

 

 どういったときに、この上逆証について話をするかと言えば、症状が発生したときに、どの臓腑の可能性が高いのかなという推測だけになります。

 

 例えば、咳をしている人がいたら、肺気上逆証だと考えることになりますが、肺気上逆証というだけでは、気血津液精陰陽の状態を確認していないので、四診によって状態を考えていくことが必要になります。

 

 肺の病証では、外邪が肺を損傷するもの、肺気虚、肺陰虚、脾肺両虚、肺腎両虚、肺腎陰虚というように咳嗽で肺気上逆だと判断しても、最終的な身体の状態の把握にはいきません。

 

 そのため、ゲップが出たから胃気上逆証だが、その原因は何か?を考えることが大切になります。気逆はどの臓と関係をしやすいかという推測のためには有用ですが、体質とは密接な関係がないと言うことができます。

 

 最初の内は、気逆・上逆は意味が分からなかったのですが、だんだんと理解が出来るようになったので、自分の理解したことをまとめてみました。

Pocket