お腹の硬さは病気のあかし?

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 東洋医学の考えではお腹の硬さや痛みは体調を捉える重要な所見として大切にするので、鍼灸治療でもお腹の硬さを重視します。

 四診という診断法では、切診という項目がありますが、切診は身体を触れるという意味になり、触診として捉えられます。

 

東洋医学の切診には脈診もあり、橈骨動脈の拍動の強弱や状態によって身体の状態を診断するもので現代医学ではあまり見られないので特徴的な診断法と考えることが出来ます。

 

 現代医学でも腹診は行っていくのですが、腹部の硬さを見るというよりも内臓の硬さを触る診断法として使われています。西洋医学的は腹診方法は、仰臥位で股関節・膝関節を屈曲させ、腹筋が緩んだ状態で内臓を触りやすい状態で行います。

 

 東洋医学の腹診では股関節・膝関節の屈曲はさせずに、仰臥位で寝たままの状態で触っていきます。腹部を触って行く際には、まずは、腹部の状態を目で診て、その後に触っていきますが、触る深さはだんだんと変えていきます。

 

 目で診るというのには、皮膚の色の変化をみていくことが必要で、どの部位の皮膚色が悪いかを見ていくだけではなく、膨隆や凹み、シワをしっかりと見ておくことが大切になります。

 

 心窩部は心、ヘソは脾、右側腹部は肺、左側腹部は肝、下腹部は腎として考えるので、膨隆、凹み、シワがどこにあるかによって臓の問題を考えていくことになります。

 

 正常な腹部は、上腹部が凹んでいて、下腹部がぽっこりとしていて、膨隆、凹み、シワがなく、さわっていくと、肌はツルツルとして、押すと硬さがないのが正常と考えられます。

 

 年を取ってくると、東洋医学的な異常が発生していることが多いので、小さい子どものお腹が触れるようであれば触ると正常な腹部が分かりやすいです。友人、親戚、患者さんの子どもなどを触れる機会があったら触れされてもらうのがいいと思います。

 

 小さい子どもは、健康な小学校低学年ぐらいまでがいいですが、小学校前の子どもの方が分かりやすいのではないかと思います。ただし、指を立てたりすると、くすぐったいと言って触らせてもらえなくなるので、身体の触れ方のスキルは高めておくのが重要になります。

 

 患者さんで来ている方のお腹を触ると、ほとんどの場合はどこかに硬さがあり、押すと痛みがあることも多いので、そこに対応する臓の問題が生じている可能性が高いと考えることが大切になります。

 

 漢方の腹診では、特徴的なものを上げているので、学校でも学習したものがあると思います。左下腹部の圧痛は少腹急結と言って瘀血と関係が深いと言われますし、胸脇苦満は肝胆と関係が深いと言われています。

 

 心下痞鞕という状態は心窩部の膨満感と圧痛なのですが、心や脾胃の問題だと考えられるのですが、教科書を開いてみたら脾胃が載っていないですね。痞の病は文献を見ていくと、脾胃や痰湿の問題と考えられるのが多いのですがちょっと謎でした。

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