全ての病気を治す薬は何かというのを考えたときに、その起源は江戸時代にさかのぼることができます。
「あなたはどこが悪いのだい?風邪を引いたのではないかい?」
「そうです、風邪をひきました。」
「では葛根湯を飲みなさい。おっ、そちらの人はお腹が痛いのかい?」
「そうです、お腹に痛みがあります。」
「お腹が痛いとは、大変だ。食事も食べられなくなってしまった大変だな。では葛根湯を飲みなさい。今度の人は、どうした?」
「先生、最近は目が痛く痛くて仕方がないです。」
「目が見えないといいこともあるけど、生活するのに難儀をすることが多くて大変だな。では葛根湯を飲みなさい。今度の人はどうした?」
「いやいや、母の付添で来ただけです。」
「そうか、では葛根湯を飲みなさい。」
これは落語にある「葛根湯医者」の話しです。どんな症状があっても葛根湯で治すやぶ医者として出てきますが、これでやっていけるのであれば、全ての病気は葛根湯で済むことになりますよね。
ただ、やぶ医者として面白おかしく伝えているものですが、話しを聞くというのと、付添まで気を使うということを考えれば、受容をしっかりしていて、名人ではないかと考えることが出来ます。
患者側からの評判を考えると、「あの先生は葛根湯しか出さないけど、話しをよく聞いてくれるよ。」となるのかもしれないですよね。
病気を治すということを考えたときに、人の身体は部品を取り換える訳にはいかないので、生活習慣を見直したりして、少しずつ改善させていくと考えたときに、葛根湯医者でもいいのではないかと言えます。
ほっておいて治るのであれば医療を用いないというのも一つの真実なのかとも思います。元気な人であれば、風邪をひいたら寝てれば治るのは知っていることなので、あえて治療薬を使ったりすることはありませんしね。
現代において、首肩こりに葛根湯がよく使われるので、葛根湯についての効用や話しは知っておいてもいいのではないかと思いました。葛根湯は表証(表寒証)の時に用いられます。
表寒証は葛根湯証と考えることができ、症状は悪寒、発熱、うなじや背部のこわばり、筋肉痛、関節痛、咳のときに使うことができます。
葛根湯は葛根(クズの根)、桂枝(シナモン)、生姜(ショウガ)、大棗(ナツメ)、甘草(甘味料)と麻黄、芍藥で作られています。日常で触れやすい食材と独特なものが組み合わさって作られています。
葛根・麻黄・桂枝・生姜は身体を温めて発汗と解熱をさせる働きがあります。その他のものは、胃腸の調子に関係したりしながら、身体を温めて発汗、解熱させるのを助けるものになります。
そう考えてみると、先ほどの葛根湯医者で出てきたような“風邪のひきはじめ”に効果があるのは当然ですが、“腹痛”にも効果があると言えるし、“目の痛み”も目の気血を調整するのであれば、胃腸を整えることが必要なので、葛根湯でもいいと考えることが出来てしまいますね。
風邪を引くと、葛湯や生姜湯を飲むといいというのは、葛根湯など風邪のときに用いられる漢方薬の中で、葛根と生姜が使われているので、家庭で代用できるものを使っていたものなので、薬を飲まなくても健康管理や食事で行えると言えますね。