症例8_解説と治療

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 症例8の解説と治療ですが、脾気虚による手汗と考えることができます。脾は肌肉と関係をしており、肌肉は四肢を意味することから手足の発汗は脾気の不足と関係をします。

1.解説

 手汗がひどくて困っている人は臨床の中で会うことが多いものだと言えますが、ひどくなると機械類を触れなくなってしまい、仕事や学業にも支障をきたしてしまうことがあり、精神的にも悩んでいってしまうので、少しでも改善を見られるように施術を行う必要がありますが、精神的なケアも考えることが大切だと思います。

 

 発症が大学入学時なので、脾の働きを低下させやすい病因がそれまでになかったのかを確認することが必要になります。脾の働きを低下させるのは、労倦・労逸という運動をし過ぎとしなさ過ぎ以外にも、思慮過度、飲食の問題がある可能性があるので、食生活に変化がなかったかを尋ねることが大切になります。

 

 この年代の女性だと無理なダイエットもしていることがあるので、もともと弱かった脾がダイエットによって、さらに弱められてしまって症状が出てくることがあります。睡眠の異常はそれほどなさそうですが、眠くなるということで嗜睡がみられているので、脾の昇清も低下している可能性もあります。

 

 脾の働きが低下し、気血津液の生成不全と汗が大量に出てしまうと、体内の津液が不足してしまい、血の生成ができなくなってしまうことがあるので、心血不足になってしまえば、心脾両虚になってしまう可能性があります。

 

 手足のむくみは水の運化が悪くなってしまっているために生じていると考えられるので、水の停滞をなくすようにすることが必要になります。脾気の不足があり、統血が低下をしてしまっていれば、月経が早くなる経早になることも多いので、月経周期についても尋ねておくことが必要になります。

 

 月経周期に異常がなくても、統血が低下をしてしまえば、月経血が大量に出てしまうことがあるので、月経血の量についても尋ねておくことが重要にもなります。

 

2.治療

 脾の働きが悪いので、健脾を図る必要があるので、代表的な三陰交も使いたいところですが、下肢のむくみも生じているので、むくみを取りやすい陰陵泉と豊隆を使うのがいいと思います。

 

 足背までむくみが強く出ているようであれば、豊隆を衝陽に変えていくと局所への効果も期待することができます。停滞している水の除去と水を出さないようにすることが必要になるので、治療としてはバランスを考えながら行っていくことが大切になると思います。

 

 発汗調節では復溜と合谷がよく使われる組み合わせになるので、三陰交ではなく、復溜と合谷にするのもいいのではないかと思います。

 

 水の流れという点で考えるのであれば、通調水道という肺の機能は水の循環に影響を与える肺経や水の通路である三焦経を用いることができます。三焦経だと、支溝・委陽(下合穴)は使いやすいところになるのではないかと思いますが、支溝は手の回内・回外によって取穴をしづらくなってしまうので、注意をした方がいいと思います。

 

 腹部も用いていくことが大切になるので、中脘、天枢、大横を使うことができますが、水の漢字が付く、水道もいいのですが、位置的に使いづらいので、水分が使いやすいのではないかと思います。

 

 労宮に透熱灸は局所の治療では使われることが多いものなのですが、これは水の調節を火で行うという考え方があるのではないかと思います。

 

 手汗がひどい方は精神的にも疲労をしていることが多いので、こういうときに百会と四神聡を組み合わせて使うのもいいと思います。

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