鍼治療を行っているときに、鍼を置いておく置鍼を行う場合がありますが、一瞬無くなってしまったかと思ったときはありませんか?
勘違いで刺入したつもりだけだったというのもあるのですが、実際に抜けてしまうことがあり、どこにいったのか分からなくなってしまうことがあると思います。長く治療を行っていると、そういった場面には出くわすことがあるので、焦らずに見つける必要があります。
人は必ずミスを犯すもので、事故を起こすことについて考えると、ハインリッヒの法則というのがあります。
「1:29:300」
ハインリッヒの法則は重大な事故・災害が起こるには、29件の軽微な事故・災害があり、その背景には300件のヒヤリ・ハットがあるとしています。
鍼が見つからないけど見つかったというヒヤリ・ハットがあれば、それが300件生じてしまえば、29件の事故につながってしまい、1件の重大な事故につながると考えるとイメージはしやすいのではないかと思います。
鍼が見つからないというのは置鍼中に見られることであり、切皮置鍼ぐらいのときにはよく発生しやすいのではないかと思います。切皮置鍼ぐらいだと、ちょっとした体動だけでも鍼が抜けてしまうことがあり、置鍼している部分がかゆく感じて、患者さんがかいてしまったときにも抜けてしまうことがあります。
患者さんの挙動を全て見続けているときならばいいのですが、電話対応などで一瞬、目を離さなければいけないときに、こういう状況が発生してしまうことがあります。
ハインリッヒの法則から考えると、ヒヤリ・ハットを予防していけば、重大な事故が発生するリスクが軽減するので、患者さんから離れるときには、「動かないでください」「ここに鍼が入っています」という声かけをしておくことが大切になります。
もし、抜けてしまった場合は、浅い鍼の場合は、タオルにひっかかっていることもあるので、タオルの確認をしておくことが大切です。治療室に鍼が常時落ちている状態だと、タオルに抜けた鍼が絡んでいて、持ちあげた瞬間に落ちた場合は分からなくなってしまうので、絶えず、床は綺麗にしておくことが大切になります。
タオルに絡まっていない場合は、治療着にひっかかってしまっていることや、ベッドのタオルに絡んでいる場合もあるので、注意して見ておくことが大切になります。
治療着を使っていないところだと、患者さんの服がヒラヒラしているものが多いと、鍼が落ちたときに絡んでしまい、分からなくなってしまうので、治療着を使うか、鍼をする部位はしっかりと開けて、洋服が鍼に当らないようにしておくことが大切になります。
頭部は仰向け・うつ伏せで鍼を刺したままでも、体位変換を出来てしまうところことがあるので、ついつい忘れてしまいそうになる部位なので、頭部から下肢までは必ず確認をしておく方がいいです。
置鍼中にタオルをかけるところもあるみたいですが、タオルをかけてしまうと、タオルをはずすときに鍼も抜けてしまうことがあり、鍼が無くなってしまったと焦ることも多いのではないかと思います。寒さを除くためということですが、治療室の温度を上げるか赤外線を当てておくという方法も使えるので、鍼をしている部位は見えるようにしておいた方がいいと言われます。
刺さった部位にタオルがあると、こすれて鍼が入ってしまったり、痛みがでたりすることがあるので、私は鍼がある部位にはタオルは使わないようにしています。
治療前後で鍼の数を確認するのも必要ですし、シャーレに上に鍼管を全部置くようにしてしまうと、鍼の数は確認しにくくなるので、使う鍼の長さのシャーレは一つだけにしておくといいと思います。