お灸では火傷になってしまうことがあるので、治療として敬遠されることが多いと思います。お灸で火傷をさせる方がいいという意見と火傷をさせなくてもいいという意見はどちらが正しいのでしょうか?
お灸は皮膚面に艾をおいて火をつけることによって、皮膚に人工的に傷を付ける療法として考えれば、火傷をさせるのが必要と言えると思います。5000年以上前に生きていたとされるアイスマンには腰痛持ちだったようで、腰部にお灸のような痕があることから治療として火傷をさせることはしていた可能性があります。
皮膚を火傷させて医療として行う行為は昔から行われていたと考えられるのですが、交通の不便もあり、長期の治療効果を狙うために火傷をさせていたのではないかと考えられます。治療に数日かけて来て、効果が数日持たないと家に付く前に元にもどってしまいます。ということは、戻るまでの間も治療効果が持続するように、皮膚面に火傷を作っておくことによって、免疫機能が高まる状態にさせたのではないかと思います。
お灸の効果が、免疫機能を向上させるということを考えると、やはり火傷はさせた方がいいと言えます。
しかし、現在では火傷をするのが嫌という人も多く、熱いのが耐えられないという人がいる中で、火傷をさせないようなお灸で治療効果を出している人もいるので、火傷をさせなくても治療効果は狙えると思います。
昔と違って、交通の便もいいので、治療に数日かかるというのは少ないので、火傷をさせない分は刺激量を増やすということで、自宅施灸を行ってもらう方法も有効だと思います。自宅施灸を行うのに、艾を使う方法を指導される人もいるようですが、手間を考えると台座灸でもよいのではないかと思います。
火傷をさせても、させなくても効果が見られるので、患者さんと治療者の考えをすり合わせて行うのが大切ではないかと思います。私は透熱灸を使って、火傷をさせないようにしていますが、理想は皮膚面だけを焦がすような形を狙うことが多いです。
皮膚面が焦げると、火傷ではなく、色が残ったような感じになり、数日すると、その部分の色はもとに戻ります。自宅で台座灸をしてもらうときには、分かりやすいお腹か特定のツボを指示することが多いですが、痛みや疲労があるところに行って下さいと伝えることもあります。
火傷をさせる、させないというのは治療者の考えにもよるでしょうが、昔と違って肉体労働も少ないので、それほど熱いのを行わないでいいのではないかという考えもあるのですが、伝わっている書籍などは偉い人の治療を行った結果ではないかということを考えると、現代人と同じような体質をしていた可能性があります。
王侯貴族は肉体労働が主ではなく、頭脳労働が主だったと思うので、日に当ったり、労働したりが少ないので、現代人の生活と似ているのではないかと思うことがあります。もちろん、その当時に肌に火傷をさせることをしていたかは、分からないのですが、お灸に関する記述はあるので、そういった面では火傷をさせる方がいいとも言えるのですが、寒熱に対する皮膚の強さは、昔は冷暖房がない状態なので、王侯貴族であっても、皮膚は強かったのではないかと思います。
明確な解答にはなっていませんが、皮膚の強さ・弱さという点からあまり火傷をさせない方を私は選んでいます。