鍼が抜けなかった経験はありますか?

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 鍼を刺入して治療をしていると、鍼が抜けない、抜けにくいという経験をする人がいると思いますが、どのぐらいの数や頻度でありますか?

 数や頻度が重要になるのは、思っていた結果と違う状態になってしまった数と頻度を出すことになるので、鍼の事故が起こるかどうかを考えるきっかけになります。

 

 以前も紹介しましたが、ハインリッヒの法則では以下の通りになります。

1件の重大事故

29件の軽微な事故

300件のヒヤリハット

 

 鍼は切皮をして、刺入をしたら、抜くというのが一連の行為であり、抜けないというのは、想像と違う失敗になるので、ヒヤリハットに属します。ヒヤリハットが多いということは、事故につながってしまう可能性が高くなります。

 

 鍼が抜けない状態は、数分~数時間とも言われるので、数分を超えてしまえば、姿勢を維持するのも辛くなってしまうので、症状が増悪することがあります。もちろん、鍼で痛みが生じているようであれば、さらに悪化をしてしまうことになります。

 

 重大な事故は、折鍼と考えられるので、抜けないことが多くある方は、折鍼に繋がってしまう可能性があるので、日々の治療で鍼の扱いは注意をする必要があると思います。

 

 鍼が抜けないという原因を考えてみると、鍼が曲がっている・絡んでいるという2点に分けられます。まずは曲がっているということを考えてみたいと思いますが、鍼の刺入が雑だと、刺入をしていくときに鍼が曲がってしまうので、鍼を曲げないように刺入を行うことが前提になります。

 

 硬いところなど、力をいれて刺入をしようとしますが、鍼が曲がってしまえば、抜けなくなるリスクも生じるので、力の入れ過ぎに注意をした方がいいと思います。痛みが出ないようにということで、細い鍼を使う人もいますが、細い鍼は曲がりやすいので、刺入をするのであれば、細い鍼は使うのは注意をした方がいいと思います。

 

 私は刺入をするのであれば、最低2番で、筋層を1層ではなく2層貫くようであれば、3番か5番を使っています。刺入自体はこちらが注意をすれば曲がるということは激減するのですが、患者さんが咳などで急に体動してしまうことがあり、この場合にも曲がりやすいので、鍼を刺入して置鍼をするのであれば、浅くしておくか、太い鍼にする必要があります。

 

 それ以外に、痛みがあるところに鍼を切皮・刺入をしてから動かすという方法を使われる人もいますが、これは筋層に鍼が入っていると当たり前ですが、曲がってしまうので、筋層を貫かないようにしないといけないので刺入して行うのは非常に危険が伴います。痛みも出やすいので、しっかりと練習を行わないといけないですし、刺激が強くなりやすいので、脳貧血も生じてしまうので、姿勢にも注意をした方がいいものです。

 

 他には、鍼の刺入・刺激として回旋を行っていたら、鍼が絡んでしまうことがあるので、回旋もしっかり練習を行っておくことが必要になります。細い鍼は1点を止めて回旋をさせていると、鍼根で鍼が折れてしまうことが多いので、回旋を多く使う場合は回旋の角度、鍼の太さに注意をしておくことが大切になります。

 

 私も何度か抜けないという経験をしたことがありますが、絡んだことが初期にあるぐらいでした。絡みを取れば抜ける程度でしたので、ここであげたような抜けない状態になったことはないです。

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