灸頭鍼の効果と使い方

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 灸頭鍼は暖かさが心地よくて、患者さんからの人気も出やすいので好きな先生は灸頭鍼を多用していますが、使い方に注意が必要なものでもあります。

 灸頭鍼がいつから行われていたのかが不明であり、はるか昔に行われていた可能性もありますが、はるか昔は文献がないので分からないですね。文章として残っているのは、明治中頃から長鍼で斜刺に灸を加えるという方法で東京の笹川智興先生が行っていたとされていて、灸頭鍼は笹川先生が考案と言われています。

 

 他には関西にいた田中昭三先生は灸頭鍼の研究を行っていて、昭和中頃に灸頭鍼を行っていたとされ、やり方が直刺で行う方法なので現在のやり方に近いと言えます。

 

 その後、いろいろなやり方をする方がいながら、学校教育の中に組み入れられていき、多くの方が知る現在の方法となっています。鍼の刺入は直刺で鍼体に艾球をつけるという方法がメインになるので、田中式がメインと言えますね。

 

 鍼の太さとやり方は人によって様々なので、バリエーションが非常に豊富です。使う道具から考えると、鍼の太さや長さは寸3の3番ぐらいが安定もしやすく使いやすいのですが、1寸の0番、2寸の5番など使う鍼は人によって、場所によって変わっていきます。

 

 短くて細い鍼だと艾球を載せたときに倒れてしまうので、艾球の大きさを工夫する必要がありますし、灸頭鍼用艾や粗悪艾ではなく、透熱灸用艾で行うことも可能なので、鍼の材質や長さによって艾を変えることが可能です。

 

 艾は粗悪になるほど、夾雑物が入っていて、重さもあり、上質になるほど軽くなるので、鍼が細くて軽い場合には、艾の質を上げていくと使いやすくなります。上質な艾になると、艾球が鍼に付着しやすくなるので、灸頭鍼用艾は知熱灸用艾より上質になります。

 

 艾の材質が上等になるほど、燃えている時間が短く、温度も低いので、ちょっと一瞬だけ温めてみたいというときには透熱灸用艾はいいですね。温かさの感じは、ほわっと暖かさがくるという感じですね。

 

 灸頭鍼用艾ではなく、粗悪艾を使うと、艾球を形成して、鍼に付けるのは大変になるのですが、熱さが強烈で長い時間燃焼しているので、強い熱を加えることができます。

 

 温度が強いと熱く感じてしまう人も多いですし、落ちると火傷もしやすいので、艾球の下に紙を置いて、艾球が落ちても直接肌に当らないようにしている人もいます。その場合だと、紙がある分だけ熱さを感じにくくなるので、1点で温められているよりも広い範囲を温められている感覚になります。

 

 灸頭鍼は艾球が落ちると大きな火傷になってしまいますし、艾に夾雑物が多いと、枝が落ちてしまって火傷になることがあるので、火傷のリスク管理が大切になります。

 

 艾球が燃えきった後、完全な灰になってしまうと、鍼から灰を取るのが大変になります。艾球が燃えた状態で、赤い火が消えた瞬間(煙が出なくなった瞬間)ぐらいで取ると、艾球がこぼれずに取れやすいので、私はこのタイミングで取っています。

 

 

 灸頭鍼は、局所を温める効果が非常に強いものでもあるのですが、お灸を使っているので熱が浸透していく感覚を与えるためにもリズミカルに行っていくのが大切になります。例えば、腰部に灸頭鍼を行っていて、艾球から煙が出なくなった時に取って、次の艾球を載せて、火をつけていくと、3壮目付近から腹部の中が温まるような感覚が出ることが多いです。

 

 腰部の灸頭鍼が怖いというのであれば、姿勢を変えて側臥位で行えば艾球が落ちたとしてもベッドの上になるので、安全になります。

 

 運動器疾患は温熱刺激が効果的なので、灸頭鍼もいいのですが、腹部疾患や痛みの軽減もみられるので治療範囲が広いと言えます。姿勢は座位でも可能なのですが、動いてしまうと艾球が落ちてしまうこともあり、さらに座位では脳貧血に注意をしないといけないです。

 

 灸頭鍼自体は、行おうと思えば、10~20か所を同時に行って全身くまなく温めるように使うことも可能ですが、火がついているのでリスク管理が大変になるので、習熟度に応じて場所を増やした方がいいですよ。

 

 非常に人気が出やすい治療方法なので、治療院によっては灸頭鍼しかしないというところもありますが、煙が沢山でるので、無煙艾を使って行う人もいます。

『特殊鍼灸テキスト』参照

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