小児鍼

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 鍼灸治療では成人の治療を行うのはもちろんですが、小児に対しても治療を行うことができるので、小児に対する鍼治療のことを小児鍼と言います。

 昔は出産が命がけのものであり、王侯貴族に取っては世継ぎを残すことが重要だったので、女性・子どもの治療が大切だったというのが分かります。特に子どもは症状がころころ変わり、自分で症状や身体の状態を説明できないので、治療が難しいのは昔も今も同じです。

 

 小児の病は「疳の虫」(かんのむし)と言われていますが、「疳」は病気を現す用語になります。東洋医学では「疳」は食事と関係するものとされ、最終的に痩せていく病気になります。疳は初期が疳気(かんき)と言われ、食積(しょくせき)という食事の消化不良が発生するものであり、中期が疳積(かんしゃく)と言われ、食積だけではなく、消化不良、多食、腹部の静脈が見えるようになり、後期が乾疳(かんかん)と言われ、極度の痩が発生します。疳積には五種類あり、五疳(ごかん)と言われますが、五とあるように五行に関係するので、五臓の名前と疳を組み合わせたものになります。肝疳、心疳、脾疳、肺疳、腎疳で、症状などは各臓と関係するものが発生します。

 

 ここまでが病気に対しての東洋医学的な知識になりますが、「疳の虫」は一般的には、小児の神経症と言われることが多いので、気分が落ち着かないような状態をさすことが多いですが、治療ではお腹を整えるのが大切になります。

 

 小さい子どもは消化能力も弱いので、食べた物がしっかりと消化されにくいので、お腹から病気になりやすいと考えることが出来ます。小児の治療では「疳の虫」は散気(ちりげ)と言われる身柱が使われますが、気が滞って問題になっているので、気を散らす経穴で治療をするということです。

 

 小児の治療では、実際に鍼を刺入することもできるのですが、身体の気血の状態が弱いので、陰陽も弱いと意味の稚陽(ちよう)・稚陰(ちいん)になるので、治療においては気血陰陽を傷つけないようにすることが大切になります。

 

 そのため、小児の治療においては接触・摩擦鍼を使うことが多いので、多くのやり方はこする・さするが中心になっています。

 

 小児鍼の歴史はかなり古くから行われていて関西で盛んだったようです。近鉄「針中野」の駅名は中野小児鍼に多くの患者さんが通うことで付けられた名前です。東住吉区の名所として中野の鍼灸に行くための案内が今もあります。

 

 小児鍼という名前は故藤井秀二博士が作られた造語としていますが、現在では広く普及をしていて、小児に使う鍼も小児鍼という名前で多くあります。何故、種類が多いのかと言えば、こする・さするという道具で使いやすいものをそれぞれの人が作っていった結果です。

 

 今から使う人は、自分が使いやすいものを使うのが一番いいと思います。小児鍼でなくても鍉鍼で代用することもできるので、自分のやり方を考える必要があると思います。

 

 小児鍼の流派として有名なのは、「大師流小児はりの会」になり、谷岡賢徳先生によって講習会が行われているので、小児鍼を身につけたいという人はここに集まることが多いですね。

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 他には、「スキンタッチ」という、家庭で親が子どもをスプーンやフォーク、ドライヤーなどを使って小児鍼を行ってもらおうという団体があるので、小児鍼を行いたいという方はこちらにも行かれることが多いですね。

 

 子どもの治療は大人と違って、生命力にあふれているからか、非常に変わりやすい傾向があるので、よくなるのも早いです。

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