鍼の響きは何か?

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 鍼を皮膚に触れたり、刺入したりすると独特な感じがありますが、これを鍼の響きと表現することがあります。

 鍼の響きは中医学の中では、酸脹重麻痛という分類があり、鍼をしたときに、だるい感じは酸、はれぼったい感じは脹、重い感じは重、しびれる感じは麻、つーんとする痛みのような感じは痛としています。

 

 鍼をしても何も感じないという人もいますが、時間が経つと感じることもあり、多くの人が感じることが多いのが鍼の響きだと思います。鍼が好きではないという人は、鍼が痛く感じるか響きが嫌いかのどちらかの場合があります。

 

 鍼の響きを現代医学・東洋医学から考えてみたいと思います。

 

 現代医学で鍼の響きを考えた場合、「感じる」ということは知覚神経がメインになるので、鍼の響きは神経刺激と考えていくことが出来ると思います。血管に鍼をして響きを感じた場合でも知覚として感じるのは神経なので、鍼の響きは全て神経と関係をしていると考えることが出来ます。

 

 そこで疑問に思うのが、鍼を刺入したときに感じる響きが神経走行に沿っていない場合があるので、本当に神経によって響きを感じているのかという疑問が残ります。敏感な人であれば、左手に鍼をしても、左足、右足、お腹、頭部、右手に響きを感じることがありますが、その場合は何が起きているのでしょうか?

 

 正解はないのであくまで仮説の域を出ないのですが、末端部に鍼を行うと、中枢神経に刺激を伝達しなければいけないので、脊柱に入り、脳に伝達をされることによって知覚をしていくのですが、入力の時に、他の部位として感じてしまうか、脳の中で他の部位として認識してしまうことがあるからなのかもしれません。

 

 絶対的な解答がないので、どうしてなのかを決めることが出来ないので、今後の研究によって解明されることがあるのかもしれませんが、私としては解明するのは非常に難しいと思っています。何故なら、身体に入って微細な刺激がどのように伝達をされていくのかを調べるのは非常に難しいことだと思うからです。

 

 脳波計を付けていたら、鍼刺激を行ったことで、脳のどの部位に変化が出るのかというのを調べることができますが、そこに伝わっていく過程となると、身体の隅々まで調べる機械を付けていないと、情報がどこに伝わっていったかを追っていくことが出来ないですし、そんな検査が現状出来るとは思えないですね。

 

 イノベーションが起こるまでは、身体に伝わる情報伝達を完璧に記録することが出来ないと思うので、今度は東洋医学で考える響きについて書いていきます。

 

 東洋医学では響きをもたらすのは、気血の流れによって情報が伝達するという考え方がありますし、経絡という情報伝達・栄養供給の機能があるので、どちらかという話しにまとめてしまうことが出来ます。

 

 例えば、左手に鍼をして、右手や右足、左足、頭に響きを感じる場合、経絡が身体を循環しているので、その順番や道筋によって響きが他に移動をしていると考えることができ、響きの本体は経脈を流れている気血と考えることが出来ます。

 

 気血は飲食物から得られていくものになるので、鍼の響き自体は穀気(こくき)と考えていくことが出来るので、三度刺すという三刺という刺法では穀気を至らせることが重要だと言われています。

 

 治療においては響きを重要視する人もいますが、鍼がひっかかるような感覚や空虚感があるようなところを目指して治療をしている人もいるようなので、響きがなければ治療効果がないとは言えないですね。

 

 鍼の響きでも鍼の本数が多かったり、数本でもいいところに入ったりすると、広がるような感覚が生じて、温かい毛布で包まれているような響きが出ることもあるので、この場合は、穀気と表現するよりも衛気を感じるような響きもあるので、響きの種類にも奥が深い感じがあるので、鍼灸師の人はいろいろと体験してみると楽しいと思います。

 

 鍼の響きが心地良いと表現をされる患者さんもいますが、この包まれている感じなのか、痛みが強くて辛いのが痒さを取るように抜けていく感じなのか、辛いからズシンと感じたいところにズシンと感じているのかは受けている本人しか分からないので、どのように響きを感じているかを尋ねていくと、いろいろな響きがあるのだということが分かります。

 

 そうやって教えてもらった鍼の響きを発生させてツボに対する刺鍼の仕方を自分なりに考えていくことによって、響きについての具体的な表現になっていくと思います。

 

 例えば、ズシンと感じますか?ジワーと感じていますか?というような擬音語を用いた表現で尋ねていくと、鍼の響きに対する具体的なイメージが自分の中で確立していきます。

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