美容鍼灸の一番のリスクは、顔面の内出血ですが、鍼を扱うということを考えたら、気胸・鍼が折れてしまう・痛みが発生するなどのリスクもあります。
寒さが強くなってきたから暖かい洋服を買いに行こうと思ってお店に入ったら、洋服を買えないどころか、来ている服を取られたら、温まりたいという目的と反対になってしまうので、クレームどころか憎むことになりませんか?
美容鍼灸は見た目を綺麗に整えるのがメインになるので、見た目が悪くなる内出血は先ほどの洋服の話と同じで、目的と反対になってしまうので、大きなリスクを持っていると言えます。
世の中ではハイリスクはハイリターン、ミドルリスクはミドルリターン、ローリスクはローリターンが当たり前に言われているので、顔面部の鍼は目的と結果を考えると、リスクが高い分、リターンも大きいと言えますね。
それだけ効果があるものにはなるのですが、リターンはしっかりと考えないといけないので、内出血をするかもしれないという同意書を取ることが多いと思います。顔面部の鍼は出血した後も内出血するのは、他の部位と同様少ないと言えますが、目立つので、不快感を伴いやすい傾向があります。
内出血をする可能性は少ないと言えますが、100%しないということはないので、内出血をしたときにどうするのかを考えておくことは大切なので、内出血をするかもしれないという説明と同意は絶対に必要になります。
鍼で出血するかという質問に対する答え方と内出血に対する対処はこちらを参考にして下さい。
美容鍼灸では顔だけではなく、頚肩に刺鍼をすることも多いのですが、前頚部は肺尖部があるので、刺入深度によっては気胸を起こしてしまう可能性があります。人は、初めは大丈夫かな?という思いで何かをして、大丈夫だったら自信が付き、何度も繰り返して行うことによってゆるぎない自信になっていきますが、その自信は本当に揺るぎない自信なのでしょうか?
もし、頚部の刺入で自信を持ったのであれば、「いつも大丈夫だったから大丈夫」という何となくの理由ではなく、「この方の筋と構造の状態から考えると大丈夫」という説明を自信を持って出来るでしょうか?
気胸を起こす状況に関して調べてみたら、「大丈夫だと思っていた」というのが理由とてあるようなので、「いつも大丈夫だから大丈夫」というのは、油断と慢心だけになるので、解剖学的な知識を積み重ねていくのが非常に大切です。
美容鍼灸だから疾患に対しては、それほど治療をしないと言う考えもあるでしょうが、顔に近い頚肩に対する刺鍼は多くなる傾向にあるので、継続した学習は重要です。
何でこんなことを書いているのかと言うと、美容鍼灸の講習を行ったという人達が美容鍼灸をやりたがることが多いのですが、肌や顔についての知識は増えているようですが、解剖学的な知識が増えているのかなという疑問を昔に感じたことが何度かあるので、何度かあると言うことは一定数での危険性として存在していると思ったので、文章として書いておきました。
美容鍼灸で鍼通電療法を行う人もいるかもしれませんが、鍼通電療法は効果が高いこともあるのですが、刺激強度が強いので、人によっては刺激が長く残ってしまい、痛みなどが続いてしまうことがあるので、鍼通電療法もリスクがあると考えた方がいいと思います。
健康な人だって、鍼通電療法を行っているときに、強い電気刺激にしたら、痛みや違和感が残ると思いますが、顔面部に残ってしまうと、表情筋は多く動かす部位なので、違和感を強く感じ易いですし、不快感も強いところになります。
顔面部の鍼通電療法を練習しているときに、ちょっと強めの刺激を行ったら、その後、数週間、痛みと違和感が残ったことがあるので、注意はした方がいいと思います。こういった経験は鍼灸師同士であれば問題はないですが、お金を頂いて行ったら、目的と反対になってしまうので、治療者も患者さんもいい気分にならないですしね。
前頚部でも、頚動脈洞が存在しているので、頚動脈洞に刺激をしてしまうと、血圧が低下をしてしまうので、脳貧血が起こりやすいところになります。頚動脈洞を使った治療法は、澤田流を普及した代田先生の治療の中に多くみられるもので、人迎を使った治療として紹介をされています。人迎に対して鍼をすると、頚動脈洞を刺激するので、血圧が低下をするから高血圧の治療でいいという話で出てきます。
頚動脈洞は圧受容器と言われ血圧が高くなると頚動脈洞で圧を受容し血圧を下げるように働きますが、ここを機械的に刺激することで、圧受容器を反応をさせるという治療ですね。澤田流の話は以前に書いてあります。
「澤田流太極療法」
美容鍼灸は疾患を持っている人ではなく、健康な人をより健康で美しくというものになるので、身体を学ぶよりも生活やケアに重点が置かれやすいと思いますが、基本である医学の知識はあった方がリスクは低下をすると思います。
美容鍼灸については他にも書いています。
「美容鍼灸の流派」