円皮鍼と皮内鍼の使い方

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 鍼灸治療が初めての方や治療効果の持続を狙って使われているのが円皮鍼や皮内鍼と呼ばれる物で、シール状になっているので、シール鍼、テープ鍼、シールの鍼、テープの鍼と呼ばれることがあります。

1.皮内鍼

 皮内鍼は赤羽幸兵衛(あかばねこうべえ)という方によって発明された治療法とされ、短くて、鍼先と反対側が円状態になっているので、刺入をしても鍼が体内に入っていかない構造になっています。

 

 皮内鍼は非常に短い物なので、ピンセットを使って刺入していくことが多いですが、まっすぐに刺してしまうと、身体を動かしたときに痛みが生じてしまうので、水平に刺していくことになります。鍼を刺入したままだと衣服が触れたときに抜けてしまうことから、テープ(サージカルテープなど)によって、固定します。

 

 鍼先ではなく、体表に残る側が皮膚に直接当たると圧迫によって痕が残ってしまうので、枕と言われるテープを小さく切ったものを体表に当て、鍼の頭をテープで体表に固定していきます。

 

 身体の状態や治療者によって、用いていく鍼の長さが違うので、いくつかのタイプが販売されています。

 

2.円皮鍼

 円皮鍼は、とても小さい画鋲のような構造をしていて、皮内鍼と同様にシールで体内に刺さったままの状態にしていく物です。まっすぐに刺さっていくので、関節部や皮膚の薄いところでは、鍼先が内部の構造を刺激し過ぎてしまい、痛みを生じてしまうことがあるので、鍼先の出ている長さが違うタイプがあります。

 

 慣れないうちは、短い物の方が扱いやすいでしょうが、治療の中で、どこまで、どのように刺激をしたいという治療計画があるのであれば、長さを変えながら利用するのもいいと思います。

 

 一般の人も扱いやすいようにということで、鍼の代わりに突起物だけが出ているタイプもあるので、患者さんに利用してもらう場合は、鍼ではなく、突起物だけになっている物を勧めることが多いです。

 

3.皮内鍼と円皮鍼の違い

 皮内鍼と円皮鍼の治療効果は違うと言えますが、あまり変わらないと言えます。なんだか、何を言っているのか分からないでしょうが、皮内鍼も円皮鍼も道具なので、使用する人の考えによって違いが生じる場合があるということです。

 

 例えば、鍼はまっすぐに刺入するというのが正しいと考えるのであれば円皮鍼の方がいいでしょうし、皮下で方向を考えて鍼をするというのが正しいと考えるのであれば皮内鍼の方がいいでしょうね。

 

 ということで、治療効果の違いは、治療者の治療に対する考え方によって変化することが多いので、道具としては変わりがないです。これは鍼にも言えることで、痛みには効果があるという視点に立つのか、痛み以外の体質的な面にも効果があるのかという視点に立つのかで大きく変わるので、どちらの方が優れているという訳ではないですね。

 

 私が大きな違いの一つが、道具として完結しているか、複数の道具を合わせるかの違いだと思います。皮内鍼は鍼・ピンセット・テープと3つの道具を上手く使わないといけないですが、円皮鍼は鍼がテープについているので、テープだけと言えます。

 

 年を取ると、目の働きが悪くなり、老眼が出てきますが、小さな道具を複数利用するのは、困難な状態になります。円皮鍼だとテープという比較的大きな構造一つで済むので、老眼になっても扱いやすいです。

 

 皮内鍼は円皮鍼と比べてよりこまかな刺入コントロールしていくことができますが、道具がバラバラになっている状態なので、一般の人は出来ないですし、鍼灸師でも練習していかないといけないですね。

 

 私は鍼灸師として長くやるという前提で考えたときに、技術の向上、利便性を含めると、便利な方を使った方がいいと思っているので、皮内鍼を利用することはないです。ただ、鍼を刺入する練習にもなるので、老眼の出ていない今は利用することがあります。

 

 皮内鍼の不便な点は、刺した物を取ると鍼が触れやすいですし、家で取れてしまったときに鍼がなくなってしまう可能性があるので、円皮鍼を中心に利用しています。

 

4.円皮鍼と皮内鍼の使い方

 円皮鍼と皮内鍼の使い方は、通常の鍼と同じなので、ツボ、痛み、身体の反応に利用することが多いです。

 

1)ツボに使う

 例えば、月経痛がひどい場合は、月経前から治療するだけではなく、内くるぶしの上3寸で脛骨の後縁にある三陰交に円皮鍼や皮内鍼を行っていくと生理痛が軽減することが多いので、鍼灸師の女性はよく利用しているのではないでしょうか。

 

 これは、ツボの効果を考えて、最適な場所に刺激をし続けるために、利用しているので、通常の治療効果を持続させたり、補助を行ったりするために利用されています。ツボに対する知識がないといけないので、一般の人が行う場合は、鍼灸師にアドバイスを受けるか、ツボが紹介されている雑誌、ネットを参考に行うことになります。

 

2)痛みに使う

 痛みが生じている場合は、その場所の気血の流れが悪くなっているので、鍼を行うことで、気血の渋滞を除くというのが鍼灸の治療の考え方なので、円皮鍼や皮内鍼を用いていくことで鍼と同様に効果を狙う物でもあるので、治療で最後に痛みが残った場合にも利用されることがあります。

 

 例えば、腰に痛みが残っているときに、痛みが残っている場所に円皮鍼や皮内鍼を使うことは多いですし、ツボと組み合わせて、腰の痛みに効果がありそうなところに利用することがあるので、ツボと痛みを組み合わせて使用することがあります。

 

 一般の人ではそこまで考えていくのは難しいので、痛みが強い1点に対して貼ってもらうのは勧めることがあります。

 

3)身体の反応に利用する

 身体の反応は、人によっても違うのですが、硬さがある、皮膚に張りがある、皮膚にひきつりがある、皮膚に陥凹があるといった反応がある場所に利用することがあります。通常は、ツボの知識、痛み、症状、体質に身体の反応を組み合わせて貼付する場所を決定することが多いです。

 

 一般の方で、美容の一環として顔面に円皮鍼を利用するのであれば、シワのあるところ、皮膚の弾力が少ないところ、硬さを感じるところなどに利用していくのがいいでしょうね。

 

5.まとめ

 円皮鍼や皮内鍼は簡便な治療方法であり、治療後に症状が残った場合に利用することが多いので、頼り過ぎてしまっている場合は、貼付する場所が多くなってしまうし、普段の治療が甘くなりがちなので、注意をした方がいいですね。

 

 顔面の美容に対して用いるのであれば、肌の状態などで円皮鍼などを行えばいいですし、数が多ければ、気血の流れがよくなり、改善を目指せるので、どのようにしていきたいかという前提を作って行っていくのがいいですよ。

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