鍼灸や柔整の資格を取得したら、「いつかは開業」が目標になる人が多いと思いますが、本当にそれがいい未来なのでしょうか?
治療院を開業するということは、ミクロとマクロの視点が大切になってきますが、ミクロの視点ばかりが注目をされ、マクロの視点がないように思います。ミクロの視点では、治療・接遇技術が付いて、事務的なことが出来るようになれば開業できるということで、多くの人が開業するためのゴールとして設定をしていますが、それはゴールではなくスタートの準備なだけになるので、開業する上では、多くのことを知って実行できる力が必要になります。
都心部を車・バイク・自転車・徒歩で移動をしていると信号機がよくありますが、信号機の数はどれぐらいあるのでしょうか?
そんなこと考えたことがないというのが当たり前だと思いますね。どこかの企業の試験のようですが、推測するのであれば、何メートルに何本ぐらいの信号機があるのかを考えて、広さと地域差を考慮して推測していくというのが正解にたどり着くための方法ですが、ここでは全く関係ないので、全国の信号機の数は約20万と言えます。
この20万という数でよく比較されているのが美容院になるのですが、全国の美容院の数は23万と言われています。都内を歩いていれば信号機だらけですが、美容院の数も同じぐらいあると考えると凄いと思いませんか?
美容院はテナントビルに入っていることが多いために、看板が他の業種と紛れているのでそれほど気にならないのですが、町にある信号機を全部美容院だと考えるととんでもない数の気がしませんか?
コンビニも多くありますが、コンビニは5万以上で増加傾向にあるので、美容院の4分の1です。コンビニだって競争が激しいので、閉店するお店があるので、そこから考えると美容院の廃業も多いと思います。
コンビニは売っている物の単価が低いので、量が売れないと苦戦をしますが、美容院は単価が高い分だけ、経費は人件費・家賃がメインになるので、開業をしやすい業種だと思います。
コンビニと同じ数だと言われているのが歯科医院ですが7万件に届かないところで横ばいの状態になっています。歯科医院もテナントに入っていることが多いので気づかないですが、コンビニよりも多くなります。
日本では廃業率が高いと言われている状態が続いていますが、高齢化社会なので高齢になったことによって廃業もするので、廃業率だけで話しをすることができません。他にあるデータでは、創業後3年以内の廃業率は70%とも言われているので、3年以上続くというのは既に勝ち組と言えますね。飲食店は2年以内に50%は廃業すると言われているので、やはり開業という企業をするというのは、リスクにしっかりと向き合わないといけないと思います。
ここまでが治療院業界以外の話しでしたが、治療院業界のことを具体的にみていくのに重要なのが、厚生労働省から出ている「平成26年衛生行政報告(就業医療関係者)の概況」になります。このデータから見ると、あん摩・鍼灸・柔道整復・その他の施術所の合計が約13万か所あります。
美容室よりは少ないですが、コンビニの倍になるので、かなりの数があるというのが分かります。無資格系やほぼマッサージが主体となるエステを加えるとマッサージ・リラクゼーションという分野にすると美容室と同じぐらいの数になるのではないでしょうか。
リラクゼーション系では、格安もみほぐしと名前をつけて営業していることが多いですが、駅前などに多数出店をしていて、駅前にあるような治療院は苦戦をすることがあります。
我々の仕事は、地域性がある物で、遠くから来院するという場合もありますが、業界としては、その地域付近からの来院が多いので、地域に多くの治療院が存在すると、競争が激化することが多いです。
小規模で自宅で開業をするという人も多いのですが、飲食店で閉店するパターンで多いのが、住居地域+小規模店舗になるので、飲食店の考え方を入れると、自宅開業は賃金リスクがない反面、売上があがりにくいというリスクがあります。もちろん、利便性がいいところであればある程度の売上が望めますが、治療でトラブルが生じた場合や嫌がらせが生じる場合は、自宅にも影響がすぐに及ぶので、見えないリスクもあります。
治療院業界の未来と書いて、暗い面ばかりになっていますが、何をするべきなのかを考えるときには、どの程度のリスクは負えるのかを考えていくことが大切なので、リスク管理は重要になると思います。
鍼灸治療では生まれてから死ぬまでの間、全ての治療を行えますが、高齢者の方が医療を受けるので、高齢者が増えてくるこれからの未来は我々の業界に取ってはメリットがあります。
ただ、リラクゼーション系は、コンビニのようなドミナント戦略を用いているところが多いので、一気に出店してくることがあるので、商業エリアでは注意をしておくのが必要だと思います。
※ドミナント戦略・ドミナント出店
地域を絞って集中的に出店することで、人的資源の相互補充、物品の移動がスムーズになるので、スーパー、コンビニで多く使われる方法。
業界の未来としては高齢者が増えるという点では明るいのですが、若い人がいなくなるということで、値段が高いところに関しては、労働人口の減少とともにダメージが大きくくるので、その点を考えておくのも大切ではないかと思っています。
これから人口が現象していく状況だと、結局、国内産業は停滞しやすいので、外国人を対象にすることを考えるのは、インバウンド戦略とも言えるので、ありではないかと思います。治療院の開業や経営に関して、こういったことは自分の勉強として行っていますが、なかなか人と話すことが無いので、ブログにまとめてみました。
※インバウンド戦略
人口が少ない地域は、外国人滞在者・外国人旅行者を対象にする企業戦略です。
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