正しい抜鍼の仕方

Pocket

 鍼を刺入したら、最後は抜鍼をしなければいけないですが、正しい抜鍼の仕方はあるのでしょうか?

 鍼治療を行うときには、目的のツボや深さに入れていくために、刺す方には集中をするのですが、抜鍼を意識して行うという人は少ないのではないでしょうか。

 

 開闔の補瀉を使うという人は、抜鍼するときに鍼孔を開いたり閉じたりを意識するので、開闔の補瀉を使っていない人に比べたら意識をするとは思いますが、鍼孔に対して意識しているので、鍼についての意識が低下するのではないでしょうか。

 

 正しい抜鍼の仕方というのは、正式にはないと思うのですが、痛みを感じさせずに抜くようにしたら、正しい抜鍼の仕方と言えるのではないかと思うので、痛みを感じさせない抜鍼を正しい抜鍼の仕方として説明してみたいと思います。

 

 抜鍼を考えるときに重要になるのが、鍼を抜くという行為なので、刺入と非常に似ているのではないかと思っているので、痛みを感じさせない抜鍼は痛みを感じさせない刺入のやり方で抜鍼を行うというものです。

 

 まず基本的なこととして、乱暴な刺鍼をすれば痛みが出やすいので乱暴な抜鍼もダメになります。乱暴な刺鍼には何があるかと言えば、なかなか入らない状況の時に鍼が曲げながらでも入れてしまうことになります。これを抜鍼として考えてみると、抜きにくいときに、強引に引き抜いてしまうと痛みが生じやすい原因になります。

 

 曲がるというのと関係をしやすいのは、鍼を曲げながら抜鍼をしてしまうようであれば、体内で鍼が曲がろうとして引き抜くので、鍼先が他の部位をひっかけてしまうことがあるのではないかと思います。

 

 例えば、鍼を指先にまっすぐに当てている状態であれば、その部位がチクッと感じるだけかもしれませんが、曲がる力を加えてしまうと、鍼先で指をこすることになるので、抜鍼のときにまっすぐに引き抜かないと、他の部位をひっかけてしまうことになるのではないかとイメージをしているので、抜鍼のときには、鍼にくいついているときにはゆっくりと抜くだけではなく、まっすぐに引き抜くようにしています。

鍼にくいつく

 

 鍼を抜くという操作では後は、スピードがあるのですが、刺入と同じように刺入のスピードが上がってくると抜鍼のスピードもあがるので適切な刺入スピードとなると非常に難しいことになります。

 

 結局は、適切な抜き方がないじゃないかということになりますが、適切な抜鍼スピードの目安は存在します。どのぐらいのスピードがいいかというと、自分の抜く最高スピードの6~7割程度で抜鍼を行うのが無駄な力が入らないので適切なスピードになります。

 

 例えば、全力で動くと身体の状態を管理するが大変ですが、簡単なジョギングであれば、周りの景色もよく見えるし、ケガもしにくいのと同じで無茶や無駄が少ないのが軽い状態なので、抜鍼も同じように軽い力で行うのがいいです。

 

 私が抜鍼のことを気にするようになったのは、抜鍼しにくい状況を経験したときに意識をしたのもありますが、響きに弱い人で鍼が響いてしまったときに、響きが出ないように抜くためにはどうしたらいいのかを考えたのがきっかけです。

鍼の抜鍼困難に対するブログはこちらを参考にしてください。「鍼が抜けなかった経験はありますか?

 

 抜鍼するときには押手を構えた方が痛みや響きが出にくいのでいいのですが、出血した場合は押手に血液が付着をしてしまうので、押手についても考えておく方がいいですね。

 

 出血リスクに対する対処としては、綿花で鍼を挟んでおくようにするか、抜鍼時には押手を置かずに抜鍼後すぐに押手の綿花で鍼孔を押さえる方が出血リスクに対しても対処がしやすいと思います。

鍼で内出血したときの対処法

 

 鍼しようとすると抜鍼よりも刺入の方に意識が集中しやすいですが、刺入力がついて、どんな鍼でも刺入できるようになったら抜鍼のことを真剣に考えるのが治療技術の向上に取って大切だと思います。

 

 例えば、手技療法でも押すことに意識が集中しやすいですが、どうやって抜くのかを意識するようになると治療効果が大きく変わっていきますし、受けている方も気持ちよさも強くなります。

 

 これは自分の中ではそれほど意識をしていなかったのですが、マッサージなどをよく受けてみて、上手な人は何が違うかというと、簡単に言えば、押しも抜きも丁寧なのですよね。押すのは体重をかければ押せるので、押す方は上手いなと感じる人はそれなりにいるのですが、抜きは身体の反応を見ながら行わないといけないのですし、力技では出来ないので、その人の実力がよくわかりますね。

 

 鍼灸の抜鍼でもスピード、方向だけではなく、身体の状態を感じながら抜鍼を行えるようになれば、技術も変わるのではないかと思っているこの頃です。

Pocket