鍼灸を受けてみようと思うきっかけの一つは、しびれがあると思います。

　しびれは強いものでなければ我慢できるのですが、感覚がおかしくなるので不快感として強く感じるので、なくしたいと思うことが多いものです。例えば、手指にしびれがあるときは箸をつかもうとしても、素手で触っているのではなく、手袋などをはめた状態で触っているように感じるので、動かしにくさだけではなく、言い表しようのない不快感が強くなります。

　イメージしにくいですかね。しびれがある人に取っては当たり前ですが、しびれがない人には分らないと思うので、例えば、しびれがある人の生活の不快感を体験するのであれば、真冬用の厚手の手袋をつけた状態で、箸、筆記具、スマホを扱うと考えれば、うまくいかないとイライラして手袋をはずしますが、しびれは消えないので、そのイライラが取れない状態になります。

　しびれが強くなるとその部位に強く感じるので痛みと同様に、痛みのように我慢できなくて辛いという状態にもなります。

　しびれに対する鍼灸治療は即効性もあるのですが、完全に消失するまでは時間がかかることが多いです。

　例えば、右腕全体のしびれが続いている人がいた場合に、治療をすると痛みの幅が大きく狭くなり、不快感も消失するのですが、しびれが続いていたので、感覚の違和感が残ることが多いです。それでも、しびれが大きく消失することがあるので、喜ばれることがあるのですが、早ければ数時間、長くても数日のうちに元に戻ってしまうことが多いです。

　なんだ、鍼は効かないのかと思うのは早すぎますが、ここで離脱をしてしまう人も多いので説明をしっかりとしておくのが大切になります。

　継続して治療をしていると、早ければ数日ですが、多くの場合、数週間～数か月で、右腕全体のしびれだったものが、前腕だけ上腕だけというように範囲が減っていきます。しびれ全体が治った訳ではないですが、範囲が大きく軽減をしているので、効果がありますね。

　数か月から1年程度経つと、治療院に何しにきていたのだっけ？という笑い話になってしまうこともありますが、しびれ自体はそれだけ時間がかかるものだというのを理解してもらうことが必要です。

　それなら自然治癒ではないかと考える人もいるのですが、自然治癒でも同じように範囲が狭まってきてなくなるというのが一般的なのですが、しびれが取れるまでは非常に時間がかかることがあるので、ひどいしびれであれば数か月から数年かかってしまうことがあります。

　私も多くのしびれがある人を治療しましたが、こちらが驚くぐらい1回でしびれが消えてしまったという人もいますが、多くの場合は段々としびれがなくなっていくことが多いですね。

　自然治癒ではないと言えるのは、治療している患者さんやこちらの都合が重なって数週間治療を受けられないと、しびれが元の広さまで戻ってきてしまうので、もし自然治癒でも治ると思う方がいるのであれば、一度、治療をせずに空けてみますかと尋ねてみるのもいいかもしれないですね。

　特に気にならないぐらいのしびれであれば、日常生活に支障はでないでしょうし、いつかは治る可能性がありますし、それでいいようであれば、その時が治療の止め時なのではないかと思います。

　1回1回の治療でしびれが完全に消えていくというのは少ないですが、しびれに対する鍼灸の治療効果は薄皮をむくように奇麗になっていくと思うってもらうと少しはイメージしやすいと思います。

　しびれがある場合はその局所に対してアプローチすることが多くなると思いますが、しびれこそ全身治療による効果が望める症状の一つなので、局所以外からのアプローチがしびれの改善に重要になります。

　例えば、同名経配穴や巨刺も効果が高いのでお勧めです。同名経絡配穴は、例えばしびれが右の肺経にある場合は、肺経は太陰経なので、同じ太陰である同側の脾経を用いるとしびれがピタッと止まったり、強さが軽くなったりすることが多いです。その場合は、同名経の有名な経穴でもいいのですが、押して圧痛が見られるところを使って、少し刺入して消えなければ刺入していくというように徐々に刺激を強めていくのでも効果がみられることがあります。

　巨刺は反対側の治療をするというものですが、例えば右腕全体のしびれであれば右腕全体を使わないといけないので全体に対しては使いにくいのですが、1点のしびれが強いという時には使いやすいものになります。

　どうしても、ここの部位のしびれを減らして欲しいというときには、巨刺で対応するのもいいですよ。しびれの範囲が広い場合には、同名経で全体に対してアプローチをして、残った点に対しては巨刺で対応するというのも一つの方法だと思います。