肩関節にあるので、肩の痛みの治療によく用いられる場所にありますが、治療範囲が広い経穴でもあり、特効穴としても有名なところになります。
肩にある経穴なので、肩の治療に対して使えるというのは局所作用として当然の内容になりますが、脳血管障害の後の上肢の麻痺の人に対して継続的に使用していくと、重さが取れていくところでもあって重要なところになるのですが、お灸との相性がいい経穴です。
肩髃の髃という感じの意味は肩前部の骨という意味があるので、解剖学的姿位になったときに、大結節・小結節が肩前部にくるので、大結節部と考えてもいいですね。
肩髃の特効穴としての働きは皮膚疾患に対して用いることが出来ます。肌の調子が悪い人に対して用いていくことが出来るのですが、全身性の痒みに効果が出やすいところになります。
全身に発赤が出て痒みがある時に、肩髃にお灸を行っていくと、壮数と共に全身の赤みが軽減して痒みが引いていくことが多いです。透熱灸が効果的な感じはするので、透熱灸がお勧めですが、火傷をさせないというのを重視するのであれば、知熱灸や温灸を使っていくしかないのですが、熱を加えると赤みは消失をしやすい傾向にあります。
東洋医学では痒みは熱が関係をしていると考えることが多いので、熱に対しての治療は熱を加えるのがよく使われる治療法になります。熱があったら寒やす、寒えていたら熱を加えるのが当たり前のような感じがしますが、熱には熱、寒には熱ということで熱を加える方が効果的な場合が多いです。
生きているという状態は熱があるのが当たり前になるので、熱が強い病能では、熱を加えることによって、生命力の活動を高めて、回復に向かわせるという意味があると思います。
全身性の皮膚疾患だとアレルギーと関係しやすいので、アレルギーによる皮膚疾患には肩髃が効果的になります。アレルギーと皮膚疾患で考えると、アトピー性皮膚炎も関係するので、アトピー性皮膚炎の強い痒みには肩髃を用いていくと、発赤と痒みが軽減をしていくことが多いです。
皮膚疾患を起こしている身体の状態を変化させないと、皮膚疾患が完全に回復するのに時間はかかりますが、継続して用いていくのでも回復していくことはあります。他には関節炎、手足の熱、高血圧、乳がんにも効果があると言われていますが、何故なのでしょうか?
何故と言われても昔に言われていて、特効穴として伝わっているから、それ以上に理由がないのではないかとしてしまえば、それまでですが、考えてみるのは自分の理解に取って重要なので、肩髃の穴性を東洋医学的に考えてみます。
痒みは皮毛に熱がうっ滞してしまったときに生じるものとして考えられ、炎症や熱はそのまま熱の病態として考えます。高血圧は、気機がうっ滞してしまい熱化してしまったときに生じやすいと考えられるので熱の病態として考えます。乳がんは腫瘍になりますが、腫瘍は体内に熱が発生してしまったときに生じやすいものと考えられるので、やはり熱の病態になります。
そうなると肩髃は熱の治療に対して効果的だと考えることが出来るのですが、東洋医学で熱をどのように対処していくのかを考えると、肩髃だけではなく、全身的な治療につながっていきます。
熱に対してはどうやって治療を行うかを考えたときに、中医学では清熱という表現をされていますが、どうやって熱が取れるのかを考えると、体内に存在している熱を体外に出すというのがポイントになります。
ただでさえ、見えないものに対して治療をしているので、どうやって出すのかというのを考えるのが大変なのですが、「発汗・排泄」によって熱を取り除くと考えていきます。
大腸経は肺経の表裏でもあり、金は皮毛という体表と関係をしやすいので、大腸経を使うということは、身体の表面に対する治療が行えるので、表面の治療と同時に表面から発汗をさせることによって、熱を体外に排出させる働きがあります。
大腸経は、大腸と関係をするのが当然ですが、大腸は大便を体外に排出させる働きがあるので、身体の中でうっ滞してしまっている熱を大便として排出させていきます。
熱は大便として出し、大腸経は表面の治療も出来るのであれば、大腸経の他のツボでも効果があると言えますが、長い歴史の中で皮膚疾患は肩髃がよいという統計を取ったのが、穴性とも言えるので、肩髃を使う方が確実ですね。
合谷や他のツボでも効果が見られるので、肩髃だけではなく、大腸経の他のツボも合わせて使うと治療効果を高めていくことができるでしょうし、病能を東洋医学的に考えてみるというのは非常に大切なことになります。