脈状診と比較脈診

Pocket

 東洋医学の診断法では脈診という方法がありますが、これは橈骨動脈の拍動を触れていくことで身体の状態を判断する方法ですが、いろいろなやり方があります。

 手首に動脈をみて何がわかるのかと思われる人もいるかもしれませんが、どんな人でも脈診で身体の状態を判断することができる簡単な方法です。しかし、細かく診ていこうと思えば細かくも出来るので、分かりにくくて難しい方法でもあります。

 

 脈診は手首の動脈を触れるというのが基本で、両手・片手でも動脈を触れてみた感じで診断をするのが脈状診と言われます。比較脈診は、指毎で脈の強弱などを比較したり、橈骨動脈とその他の動脈を比較したりする方法があるので、比較する脈診を比較脈診と言います。

 

 脈状診で誰にでも分ることは早いか遅いか、強いか弱いかだと思います。運動をしていれば、血流がよくなるので、心臓がバクバクするという表現があるように、動脈の拍動は強く早くなることが多いです。運動をしていないのに脈が早かったり強かったりすれば、おかしいなと感じると思いますが、こういった普通で見られやすい脈との違いを考えるのが脈診法になります。

 脈診法の脈状診の簡単な使い方に関しては「脈診の簡単な使い方」の中で書いています。

 

 比較脈診は、脈を比べていく方法になるのですが、有名なのは六部定位脈診ではないかと思います。六部定位脈診は、『脈経』が起源と言われ経絡治療学会でよく使われている脈診法で、日本でよく使われている方法になります。鍼灸学校に通ったことがある人であれば、六部定位脈診と『難経』六十九難の配穴は必須なので、卒業しても少しは覚えているという人が多いものだと思います。

 

 六部定位脈診は、脈の違いを診る方法なので、脈差診(みゃくさしん)と言われることがありますが、脈の違い(差)診るということですね。六部定位脈診は私も少しは勉強をしたのですが、弱いところを見つける、強いところを見つけるというような先生による違いもあるので、診方が分かれていきます。

 

 比較脈診は他には、遍診法(三部九候法)、三部診法、人迎脈口診という方法があり、教科書にも記載がありますが、あまり使われていないという現状があります。

 

 何故、使われていないかという理由が書いていないので分かりませんが、これらの比較脈診は比較する場所が多く、身体の様々な拍動を比較する方法なので、診察だけではなく、治療の途中で変化が出たかどうかを確認(検脈:けんみゃく)しようとしても手間が増えて大変になるので、使われている人が少ないのではないかと思います。

 

 なぜ、こんなにいろいろな脈診の仕方があるのかと言えば、人間の身体を知るのに正解がないですし、こうやったらよく診られるのではないかと考え続けていたという歴史だと思います。

 

 歴史かよ、面倒だなと思う人もいるかもしれませんが、歴史はかなり重要なもので、今、生きている人に取っても重要なものになります。

 

 例えば、何か分からないことがあったときにどうするかと言えば、知っている人を探すか、ネットで検索をしてみるとか、書籍を買うかという行動につながると思いますが、これは誰かが挑戦をしてまとめたものを見るということで、歴史を学んでいることになります。

 

 歴史を学ぶというと、学生時代のようにひたすら暗記をするものだと思う人がいますが、自分が生きていくための指標を得るために歴史を学ぶことが大切ですし、日常的に行っている方法なのですよね。

 

 もちろん、深く掘り下げていくとなると、歴史を学ぶのには、覚えることも調べることも増えていくので、大変さが増します。

 

 東洋医学は歴史も長いので、調べていこうとすると本当に大変なところでもあるのですが、治療を勉強したい、治療がうまくなりたいという人に取っては、歴史が長いというのは、自分の助けになる物が多いと言えます。

 

 例えば、スマホやパソコンの使い方で何人に教わっても何冊読んでもわからないということは実際にありますが、ふと聞いた人やふと見た本で解決したという経験はないでしょうか?

 

 いろいろな情報があるというのは、探すのも読むのも大変ですが、自分の悩みを解決できる可能性が多いとも言えます。

 

 脈診は脈状診か比較脈診しかやらないという人も多いかもしれませんが、そこで分からないし、出来なかったという人は、他の比較脈診がはまる可能性もありますね。

 

 私は、比較脈診にはまっていた時期もありますが、脈状診だけでいいのかなと考えるようになって、脈状診が基本になっています。脈状診は診方が難しいと思う人がいるかもしれませんが、出来るだけシンプルに考えるようにしています。その内容は「脈診の簡単な使い方」に書いています。診察法の概略に関しては「東洋医学の診断法―四診」を参考にしてください。

Pocket