鍼灸はプラシーボ効果?

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 医療の研究ではプラシーボ効果(プラセボ)が用いられることがありますが、鍼灸はプラシーボ効果が多いのでしょうか?

 プラシーボ効果は、プラセボ(偽薬)を使うことによる研究として用いられているので、ある薬の研究をするときに、同じ症状がある人達を集めて、片方には正常の薬、片方にはプラセボを投与することによって、その薬がプラセボと違って本当に効果があるのかを調べる方法です。

 

 プラセボでも、医師が説明をして渡すと効果が出たりするということで、薬の効果なのか、医師という効果なのかを判定するものにもつながりますが、このような反応は一般の生活の中でもよくありますね。

 

 例えば、非常に高いもので、○○という人が飲んで健康になったものだから効果があると言われば、高かったのもあるし効果があるような気がしませんか?確かに、効果があるのかもしれませんが、先入観から良さそうという気持ちがあれば、身体に取って効果を発揮する場合があるので、本当に効果があるのかどうかを決めるためには、プラセボの効果を除外する必要があります。

 

 鍼灸でも本当に効果があるかないかを判定するために、プラセボを研究の中に取り入れていくのが、EBM(Evidence-based medicine:根拠に基づく医療)に取って大切だと言われています。そのため、研究にはプラセボを取り入れて、鍼灸の効果があるのかを判定することが大切なのですが、鍼灸でのプラセボが非常に難しいことが多いです。

 

 鍼灸治療では、鍼・灸を行うというのが当たり前なのですが、プラセボを決定するのに、鍼を刺入と刺入しないというので分けるのが簡単なのですが、鍼を身体に触れるだけで効果が出ることがありますし、それだけで治療をしている人もいるので、そういった治療をしている人に取ってはプラセボではなく、通常の鍼治療になってしまいます。

 

 研究デザインとしては、刺入する・刺入しないという分け方は簡単なのですが、身体に対する効果としては、刺入する・刺入しないだけでは分けられないことが多いです。この分け方で考えてしまうと、実際の鍼灸治療を科学的に研究も出来なくなってしまうので、鍼灸のプラセボ効果を判定するのは非常に難しいことになります。

 

 例えば、刺入する・刺入しないでプラセボを判断するという場合に、肩こりに対して鍼の治療効果の研究をしたとします。刺入をすると効果を感じた人が5割で、刺入しないプラセボ鍼でも5割の効果が見られてしまったとすると、肩こりに対する鍼の治療効果はプラセボの域を出ないという結論になってしまいます。

 

 鍼灸治療をしている人から取ってみれば、刺入をしても刺入をしなくても、ほどほど効果があるのを体感していますし、患者さんも治療結果として体験をしているのですが、科学的研究という点からすると、効果がないという結論になってしまいます。

 

 それならば、鍼を刺入するのに管に入れて皮膚を切る動作をしているので、鍼を刺入しないで管を叩くだけというのも考えられるのですが、鍼を使わずに、鍼管だけを叩く治療の仕方があり、管散術という方法があるので、管を叩くだけでも身体に影響を与えてしまいます。

 

 では、管も置かずに肌を叩くだけにしたらどうかと考えるでしょうが、ツボやポイントを叩くだけというタッピングという治療法もあるので、叩くという行為自体が治療行為になってしまうことがあります。

 

 こうなってくると、肌に触れないで、叩かないで、物を置かないという方法を取れば、プラセボとして考えることが出来るのですが、受けている人がさすがに何もしていないというのが分かってしまうので、研究としては成り立たないですね。

 

 こうやって考えていくと、鍼灸はプラシーボ効果ではないということを立証するのも難しいだけではなく、鍼灸がどのぐらい効果があるのかを立証するのも難しいので、鍼灸の研究がなかなか進まない原因でもあります。

 

 もちろん、研究をするには資金が必要なので、資金がないと研究できないという状況を考えると、資金が多く入ってこない限り難しいところでもあります。医療費を抑制するためには鍼灸を使う方が安上がりなのですが、安上がりにしてしまえば、今度は医療産業が成り立たなくもなるので、研究をしようと思っても難しい側面が多くあります。

 

 いっそのこと、鍼灸の治療効果を確認するのに、皮膚を触られたか触られていないかというのがバレてしまうので、睡眠薬や麻酔で寝かせた状態で、鍼をするかしないかのグループ分けをすれば分かることも多いと思いますが、道義的にも難しいですし、睡眠薬や麻酔薬の効果を除外しなければいけないので、やはり鍼灸治療は研究としては難しい傾向があるのだと思います。

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