足(膝)陽関

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 陽関穴はわざわざ足・膝などの名前が付いているのは何故かと言えば、同名の経穴が他にもあるからです。陽関と付くのは腰陽関というツボが督脈にあるので、陽関以外に部位の名前を付ける必要があります。

 膝陽関は寒府とも言われるツボでもあるので、寒が集まりやすい場所という意味があるので、冷えに対する治療に用いることができます。陽関は陽側の関節という意味もあるので、膝関節の外側にあるという部位の意味もあります。

 

 膝陽関の場所は、膝外側で大腿二頭筋と腸脛靱帯の間の陥凹部に取るのですが、腸脛靱帯や大腿二頭筋は意識して触ることが少ない人もいるでしょうし、外側部は日常の治療の中でも触れにくいところなので、取穴に慣れるまでは時間がかかる場所になります。

 

 私も含めいろいろな人に話を聞くと、胆経は学校の授業では最後に習うことが多いですが、最後に習うので復習が少なくなってしまうところなのですよね。勉強しようとすると、最初から初めて途中で力尽きて、また最初から学習することが多いので、肺経は忘れることがないのですが、胆経はツボの数も多いので、すぐに忘れてしまいますね。

 

 胆経のツボは効果的なところも多いのですが、外側というのは骨の指標もないので、迷ってしまうことが多いです。私自身が胆経を触れるようになったかなと思ったのは卒業してから数年経ってからだと思います。

 

 外側部は治療効果が高いなと手技の治療でも感じていたのですが、細かい触り分けが出来なかったのと、はっきりと分からなかったので、理解するまで非常に時間がかかった覚えがあります。

 

 膝外側にあるツボになるので、膝外側の痛みに効果が出やすいところの一つですし、ランナーズニーの治療においては重要なツボの一つになります。ランナーズニーは腸脛靱帯の付着部が擦れてしまって生じる痛みになるので、腸脛靱帯の部位にある膝陽関、中瀆、風市は効果的な場所になります。

 

 昔の文献では膝の曲げ伸ばしが出来ない人に対する治療穴という話があるのですが、この膝の痛みは腸脛靱帯炎だったのではないかと思いますね。腸脛靱帯炎はひどくなると、膝を曲げる時も伸ばす時も痛みが発生してしまうので、膝の屈伸運動が出来なくなることが多いです。

 

 寒府とも言われて、冷えに対する治療に対しても用いることができるので、膝陽関に対してお灸を使うのもいいのですが、大腿外側にあるので、横向きでないとやりにくい場所になりますね。

 

 坐骨神経痛のように、腰から大腿外側にかけての冷えと痛みが生じている場合には、非常に効果が高いところなので、そういった時には、膝陽関に対して灸頭鍼を行うと効果が出やすい場所になります。お灸系では知熱灸もあるのですが、皮膚を濡らして艾炷を載せるか、横向きになってもらわないといけないので、簡便なのは灸頭鍼になりますね。

 それぞれの技術に関してはこちらのブログを参考にしてください。

棒灸の使い方と効果

灸頭鍼の効果と使い方

知熱灸の最適な大きさと治療効果

 

 お灸以外では、吸角を行うことができるのですが、膝関節付近が平らになっていないと吸角を付けることが出来ないので、吸角は出来る人もいる可能性があるというぐらいですね。

吸角の効果

 

 やはり使いやすさからしたら灸頭鍼が一番いいと思うのですが、灸頭鍼をリズミカルに3壮程度行うと、下腿外側や大腿外側に温かさが伝わることが多いので、足がすっきりと感じることも多いです。

 

 膝の痛みが中心であれば、膝陽関から膝関節の方向に少し向けると効果的だと思います。膝陽関から大腿後面に向けて刺入を行うと、大腿の裏側の張りも軽減することが多いので、冷えと腰痛があるような人には効果が出やすい刺入方向になります。

 

 前側に向けて刺入する場合は、うつ伏せのときに行うのが楽なのですが、前側には腸脛靱帯があるので腸脛靱帯炎であるランナーズニーがあるときには効果がある刺入方向だと思います。

 

 手技でアプローチする場合は、膝陽関をそのまま用いてもいいのですが、膝陽関の少し下で膝関節の外側部をこするだけでも腸脛靱帯に緩みが出るので治療効果が高いポイントにもなります。

 

 足がだるいようなときには私も膝陽関の下部を四指で擦ることが多いですね。冷えがある方に対しての自宅でやってもらうセルフマッサージの指導でも使えるので、便利な場所になると思います。指導で使うときにも、膝陽関だと取穴するのが難しいので、膝関節の外側から上部にかけてこすってもらえれば、膝陽関に刺激を与えることになるので、膝関節の外側という認識をもっておくのもいいですね。

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