大正漢方胃腸薬は有名ですが、漢方と言っても何が入っているのか考えたこともなかったので、ちょっと調べてみました。
大正漢方胃腸薬は安中散(あんちゅうさん)と芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を合わせた独自処方みたいです。安中散については今まで書いたことがないですが、勺薬甘草湯は過去に書いていますので、こちらを参考にしてみてください。
大正製薬は大正製薬ホールディングスの一つで上場会社なのですね。グループ会社に養命酒製造株式会社もあるし、現代医学の薬や健康食品だけではなく、漢方系の開発と研究も行っているのですね。調べてみて初めて知りました。養命酒は昔に頂いたことがあり、少し飲んだことがありますが、私には味が合わなく感じたし、体調に不安もなかったので、冷蔵庫の中に長期間居続けた結果、廃棄をした覚えがあります。
勺薬甘草湯は、血虚と肝気の停滞(気滞)が生じている場合に用いるので、虚証・実証どちらの場合でも用いやすい漢方薬になっています。気滞が生じると脾胃に問題を生じる場合があり、気血の生成は脾で行われるので、脾に対する治療も考えられた処方になります。八綱弁証の考え方や虚実、気血の病変に関してはこちらのブログを参考にしてください。
安中散は、八綱弁証で言えば、裏虚寒証に対する処方になるので、中医学の考え方で言えば、脾陽虚として考えることができます。脾の働きが低下をしてしまい、脾気の不足が生じ、陽虚になった状態なのですが、食事や冷えをうまく取り除くことが出来ないので、胃に寒が停滞していると考えられます。
対応となる症状は脾胃の病変になるので、食欲不振、げっぷ、吐き気が生じることがあり、発生する所見としては胃内停水や腹壁軟弱があります。胃内停水は腹部に水がたまった状態で、仰向けに寝たときにお腹を軽く叩くと、ぴちゃぴちゃと音がなることです。健康な人でも大量に水分を摂取しときには音が鳴るので、興味がある人は大量に水分を摂取した後にやってみるといいですね。
大正漢方胃腸薬の説明では、虚証に対する漢方薬の安中散と虚実両方に使える勺薬肝臓とを用いることによって、体質の虚実に関係なく用いることが出来るので便利な処方と書かれています。
勺薬甘草湯も安中散も治療対象として脾胃が入っているので、大正漢方胃腸薬は名前の通り、胃腸薬としての働きを重視した処方ということが分かりますね。
勺薬甘草湯では、血虚だけではなく、気滞も関係をしているので、ストレス性胃炎であれば肝気に対する治療と脾胃に対する治療が必要になるので、大正漢方胃腸薬はかなり効果的だということが分かりますね。
安中散では、脾の働きの低下だけではなく、陽虚に対する処方も入っているので、お腹の調子が悪いのが続いて、体調が落ちてきてしまった人に効果的な処方になるので、やはり大正漢方胃腸薬が効果的ではないかと言えます。
長い歴史がある漢方薬を組み合わせて使うというのは、どの時代にもある処方なので、大正漢方胃腸薬も考え抜いた処方だということが分かりますね。成分の細かい内容に関してまではさすがに分かりませんが、胃腸薬というだけあって、脾胃に対するメインの処方だというのは分かります。
販売は1978年になるので、歴史としては40年近くの実績がありますが、発売当時の日本の状況を見てみると、ニクソンショック・オイルショックなどの経済問題が発生していましたが、高度経済成長から安定成長期に入る時期だったので、日本全体としては活気に満ちた状態でしたね。
安定成長は1990年代のバブル崩壊まで続くので、仕事をしている人達は働けば働くほど収入も上がった時代ですし、多くの人がガムシャラに働いていた時期だと思います。
そういった時代に胃腸薬が販売されるようになったというのは、その当時の人達の生活と病気をしる上でも重要なことなのだなと思います。
働いて給料が上がっていい状態だったのでしょうが、働いている人たちは、仕事のストレス、忙しさによって胃腸の問題も多く出るようになっていたのでしょうね。
その時代に働いていた訳ではないので、当時の状況というのが分かりませんが、バブル崩壊以前を経験している患者さんなどからは、いい時代だったという話があるので、本当にガムシャラに動き続けていたのでしょうね。
ガムシャラに働き続けている状態は、東洋医学では労逸(ろういつ)の中の労倦(ろうけん)と言われる状態で、四肢もよく動かしているので、脾胃の働きの低下を期待しやすいものなので、大正漢方胃腸薬が効果的になったのではないかと思います。
現代でも仕事とストレスは切っても切れない関係なので、ニーズは十分あるのではないかと思います。今回、初めて調べてみましたが、調べていくと発売された状況なども考えると面白いなと思いました。