刺入深度の分け方

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 鍼を刺すときに、どのぐらいの深さで行おうかと考えないといけないのですが、刺入深度の分け方にはいろいろな考え方があります。過去にもいろいろと書いているのですが、今回は違った視点から書いてみたいと思います。

 以前のブログでは、鍼の刺入深度の決め方としては、鍼の長さを元にして、どれぐらい刺入できるのかというのを書いています。または、季節によって、身体の状態も変わるので季節によって刺入深度を分けるという考え方もあるというのも書いています。

「鍼治療で刺す深さはどう決めるか」

「季節による刺入深度の決め方」

 

 他には、響きが出るまで刺入をするということで、響きを主体に考えて刺入深度を決める人もいるだろうということで、響きが出る深さという点から刺入深度について書いている内容もあります。

「鍼の響きが出る深さ」

 

 通常、鍼を刺入しようとするときには、何に刺入をするのかという具体的なイメージが必要になっていきます。経絡は目に見えるものではないので、経絡が皮膚の下のどのぐらいを走行しているのかという自分のイメージがあれば、その深さに鍼を刺入するのも一つの方法だと思います。

 

 私は刺入をするときには、触った感覚がどのぐらいの深さに問題があるのかを考えて刺入をすることがあるので、そのイメージを書いてみたいと思います。

 

 身体に鍼を刺入するということは、組織を貫いていくのですが、構造に違いがあるので、まずは、構造をイメージすることにしています。皮の下には皮下脂肪があり、その下に筋肉があります。筋肉は、何層にも重ねっている状態になっていることが多いので、表層から深層へのイメージとしては以下の順番になります。

  •  皮膚
  • 皮下脂肪
  • 筋肉(筋肉表面・筋中・筋肉裏側)
  • 筋肉(筋肉表面・筋中・筋肉裏側)

 鍼は皮膚を切るところがあり、切った後は皮下脂肪(真皮?)で、そこを過ぎると筋へ進みますが、筋肉には表面・中・裏側があり、刺入をしていくと第1層目の筋肉の裏側から次の筋肉の表面に進んでいきます。

 

 触診の感覚がついてくると、こういった構造のどの深さに問題があるのかを考えて刺入をしていけるようになるのではないかと感じています。例えば、触ったときに、硬結が表面にあるようであれば、皮膚、皮下脂肪、1層目の筋肉にあるというが分かると思います。

 

 もちろん、私も最初の頃は触ったとしても、どのぐらいの深さにあるのかという深さの感覚が分からなかったので、刺入をしてみてから鍼先の感覚で確認をするというのを行っていました。

 

 学生時代は刺入感覚が変わると教わったことがあったような気がするのですが、さっぱり分からなかったですね。卒業して数年したら、少し違うなという感覚が出てきて、最近はようやく違うだろうという感覚になってきましたが、まだ明確な感覚になっていないですね。

 

 最初の頃のイメージとしては、外側(皮膚、皮下脂肪、1層目の筋肉)か内側(2層目やより深層の筋肉)ぐらいしか分かっていませんでしたね。皮膚だけを擦るというのを何度も練習したことで、その後は、皮膚、外側(皮下脂肪、1層目の筋肉)、内側(2層目の筋肉)の3層ぐらいは触り分けられるようになるので、鍼灸師になりたての方は、まず、皮膚だけで診るという練習をするといいですね。

 

 手を皮膚の上に置いて、皮膚だけが動くようにすると、皮膚の可動性を見ていくことが出来るので、可動性がよくないところに切皮をしてみると、動きが改善をします。皮膚は全身に一枚の膜として存在しているので、膜のどこかでひっかかりがあると、他の部位での動きにも影響をしてしまうので、肩こりがあるような方でも、背腰部の皮膚の動きをみて、動きがよくないところに切皮をするだけでも肩こりが改善することが多いです。

 

 皮下脂肪の層を理解するためには、若い人よりは年齢がいくらかいった人の方が、皮下脂肪があることがあるので、判断をしやすいと思います。皮膚に慣れた状態であれば、 “厚い皮膚”だなという感覚だと思います。皮膚を動かそうとしても、動きが重い感じがあるので、その場合は、皮下脂肪の可能性が高いです。鍼で治療する場合は、切皮よりは本当に少しだけ刺入をする必要があるので、刺入を微調整できる技術が必要になっていきます。

 

 この層に上手く鍼が当ると効果が出るのですが、刺入も抜鍼もしないで揺らすような雀啄術(じゃくたくじゅつ)を行うと変化が出やすいです。皮膚のときよりも操作が必要だと感じています。

 

 筋に刺入をしていく場合には、筋の表面で効果が出る場合が多いですが、深部に硬い硬結があるような場合は、そこまで刺入をしていく法が効果的ですね。硬結に鍼が届いたときにも、その場所から鍼が上下しない程度の雀啄術をすると緩んでいきやすいと思います。この細かい雀啄術が扱えるようになると治療の幅が広がるのではないかと思っています。学校で雀啄術を習ったときはザクザクという感じでしたが、あれはあまり効果がないのではないかと感じてしまっています。

 

 筋の中から次の筋にいくときには、その筋を貫かなければいけないので、貫くときに微妙な抵抗があり、貫くと今度は次の筋の表面の抵抗があります。こうやって、細かく感じていこうとすると、それぞれに微妙な抵抗があるので、これかな?と考えながら刺鍼をしていくと、鍼先の感覚がついてくるのだろうと思います。

 

 殿部などの深層に対して刺入を行っていく場合には、抵抗の幅が大きくなるので刺入するのも大変ですし、鍼の長さも必要なのですが、押手を工夫すれば、深層にすぐに到達します。殿部以外のところでも使える技術になるので、押手を使う方法は知っておいた方がいいと思います。この内容は過去のブログにあるので参考にしてみて下さい。

「鍼の刺入で押手を上手く使うと刺入深度がいらない」

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