拘縮に対する治療

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 脳血管障害の後遺症などでは、筋肉が縮まったままになる拘縮になることが多く、訪問鍼灸などでは多く遭遇する状態だと思います。

 脳血管障害だと、弛緩性麻痺になる場合や拘縮が起きる場合があるのですが、弛緩性麻痺は改善していくのは難しい印象があります。拘縮に関しては、完全に戻るというのは難しいですが、治療後は伸びる、ゆるみが少し出てくるのが多い印象です。

 

 治療としては、難しく考えずに、拘縮が生じている筋肉または経絡を意識して鍼をするだけでも改善することが多いです。

 

 例えば、脳血管障害後遺症で多い、手の拘縮ですが、手を握ったままになってしまうので、手の衛生状態が悪くなりやすく、爪を切るのも大変になってしまうので、手が開く時間があると、改善をしやすいです。

 

 理学療法として手を伸ばそうとすると、かなり時間がかかることが多いと思うのですが、ツボ押しを考えて行うと、かなりスムーズに動くので、手技療法の方もツボや触り方を意識して治療をすると改善がみられると思います。

 

 私は、鍼を使うことが多いのですが、全ての状況で鍼が扱える訳ではないので、指で拘縮に対して施術を行っていくこともあります。

 

 拘縮に対して鍼を行う場合は、拘縮が強い部位に鍼を切皮するだけでも変わることが多いので、それほど考えなくても治療をすることが可能なことが多いです。拘縮の筋肉まで触れる程度に刺入するのが効果的なのですが、切皮だけでも置鍼しておくと変化がでてくることが多いですね。

 

 手技でアプローチをする場合は、押す加減が非常に大切になっていきます。感覚的な話になってしまうのですが、拘縮のある筋膜に触れる程度に圧をかけるのが、一番効果が発揮しやすいのではないかと思っています。

 

 それ以上押していっても効果が少ないので圧加減の微妙さが必要な手技に入るのだろうと思います。押す時に皮膚を触れ、筋肉を触れようとして、本当に少しだけ押しますが、その時に、指先には拘縮した筋肉の硬さがあるなと感じたところで、圧を一定にしたままキープします。

 

 5~10秒程度すると、筋肉が弛む感じが出てくるので、関節を少しだけ動かすと、最初よりも伸びるような感じになっていきます。これが出来るようになると、手が二本あるので、二点同時に施術を加えていくことが可能になります。

 

 例えば、脳血管障害後遺症のときは、肘関節が屈曲をしてしまっていて、手関節が掌屈の状態になっています。手関節だけではなく、指の関節も屈曲をしている状態を改善しようとするときに、私は合谷と尺沢に左右の指を置きます。

 

 先ほどに書いたように、筋膜の付近に触れたところで指をしばらくおいてきます。指先で緩む感じがしてきたら伸ばしていくのですが、伸びてこないようであれば、少しだけ圧を加えます。

 

 少しでも緩んできて、動かせるようになったら、置いた指の場所を変えていきます。例えば、合谷に置いた指であったら、合谷の上下左右、尺沢であれば、尺沢の上下左右に変えていきます。

 

 その時の指標になってくるのは、筋肉の硬いところにしておくと、変化がでやすいことが多いです。

 

 拘縮している筋肉は、弾力性も低下をしていて、あまりに強い刺激をしてしまうと回復するのにも時間がかかるので、刺激量にはとにかく注意をすることが重要です。

 

 場所を変えていくのは、その場所で変化を出せるようになったとしても、それ以上の変化が出なくなったら、その場所の持っている力がなくなってしまったとイメージしてもらうといいのではないかと思います。

 

 小児麻痺でも完全に緩んだり治ったりする訳ではないですが、緩むことは多いです。麻痺をしている人に取っては、動かすことも手を開くこともできないので、少しでも動かすことができるときがあると、非常に喜ばれますね。

 

 治療頻度をあげていけば緩みも継続することもあるのですが、頻度を落とすと元に戻ってしまうことも多いです。

 

 手は拘縮をしていても、生命力が亡くなった訳ではないので、指の末端部にある爪は伸びてきてしまいます。拘縮した状態では爪切りも大変な状況になってしまうので、せめて治療後は爪切りなどのケアをしやすい環境を作ってもらいたいと思っています。

 

 理学療法士と連携を出来る環境であれば、鍼灸師が拘縮を緩ませた状態で理学療法を行うとかなり効果的ではないのかなと思うことも多々あるのですが、なかなか上手くいかないですよね。

 

 理学療法士に取ってみれば、鍼や手技で簡単に開いていくのは意味が分からないでしょうし、現代医学的には治療原理を説明することが出来ないので、信じてもらえないことが多いですね。

 

信じてくれる場合もあるのですが、理学療法士は病院勤務で、患者さんを見られる時間が限られていますし、理学療法士の横で鍼灸を行うという状況もすくないという、連携が取りにくい状況になってしまっていますね。

 

 理学療法を行う前には、痛みも取れた方がいいので、理学療法に行く直前に鍼治療を行えるという環境が出来たら、患者さんに取ってもいいでしょうが、制度的には難しい状況にはありますね。

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