過去に脈診についてのブログを書いていますが、今回は、滑と濇だけを細かく掘り下げてみたいと思います。
脈診は、感覚で診断する方法なので、理解して習得するのが大変だと感じる人が多いでしょうし、患者さんに伝わりにくいので、練習や勉強をしないという人もいるのではないでしょうか。実際に私のクラスでは、学生中に脈診にこだわって治療をしていこうという人はいなかったと思います。現在は、脈診を使っているのか分かりませんが、多分、少数派だと思いますね。
他の学校やクラスのことは分からないのですが、流派に所属している鍼灸師はまだしも、他の方達は、脈診って?という状態になっている人もいるのではないでしょうか。
せっかく東洋医学を勉強したのであれば、少しでも脈診に触れていてもらいたいと思いますし、脈診で思いもよらぬことに気がついたりするので、腕は磨き続けて損はないと思います。脈診をやられている先生の話しでは、全身状態は異常がないのに、脈診が明らかにいつもと違いすぎたので、おかしいと思ったから病院を勧めたら病気が見つかったという話しもあるので、得意ではなくてもやることは大切なのではないかと思っています。
脈診を少しでも使ってみようというときには、祖脈である浮沈虚実遅数を理解しておけば何となくは治療に使っていくこともできるので、簡単な脈診の使い方に関しては過去のブログを参考にしてみてください。
滑濇の話しをするはずなのに、大幅に話しが反れてしまい、申し訳ありませんでした。滑濇とういのは、気血の運行状態を診るために重要なものになっていくので、滑濇を理解するだけでも気血津液の状態を推測していくことができます。気血津液を細かく診断することは気血津液弁証といいますが、気血津液弁証はここではあまり触れないので過去のブログを参考にしてください。
滑濇というのは気の働きで言えば、推動作用の状態を診る物にもなりますし、営気の状態を把握できるものになるので、脈診を行っていくことで、気の状態を伺うことが可能になります。
滑という脈は正常なときに診られやすいものであり、典型的な滑脈は妊婦の脈になるので、妊婦の方の脈を一度でも診ることができれば、滑脈を理解できます。ただ、妊婦の脈は違うなと感じるためには、他の人の脈を数十人触っておく方がいいと思います。
濇脈は血瘀・瘀血のときに診られる脈と言われているのですが、滑脈と比べると、ザラザラ、ジュクジュクとしたように感じる脈になります。典型的な濇脈を触れるとこれもすぐに理解を出来るようになるのですが、濇脈って何だ?という状態だと理解するのに苦労をすることが多いです。
典型的な濇脈を持っている方は、高血圧や循環器障害を持っている方では触れることが多いので、そういった方がいたら脈を診させてもらって、正常な人と比べてみると、違うと言うのが理解できるようになると思います。
脈診をされている方の判断を何人か確認したことがあるのですが、個人的な感想だと、典型的な濇脈よりも幅を広く濇脈を利用している人も多いのかなという印象を持ちました。何のことかと言えば、典型的な濇脈は循環器系疾患を持っている方に診られやすいということを話しましたが、治療院に来る方の多くが循環器系疾患を持っている訳ではないですし、動ける方なので、比較的健康とも言えます。
そういった中で濇脈を鑑別していくために、予兆までを踏まえて診ていくことになったと思うので、典型的な濇脈以前の濇脈を診ているのではないかと言う印象です。
脈診をやってみようというときに、微妙な違いというのは鑑別をしにくいので、典型的な例を触れてみて、滑と濇で言えば、どちらの方が近いのかという形で学習を行っていくのが脈診の習得では重要なことだろうと思います。
滑と濇では流れの阻滞があるか、ないかを判定する物になるので、気血の運行がひどくなっていないのを滑、気血の運行がひどくなっているのを濇と考えていくことができるので、病態としては濇脈の方が重症のことが多いです。
そのため、脈診で滑と濇を鑑別することが出来れば、体調の順逆を考えていくことができます。滑脈であれば、気血の運行までは阻害されていないので、体調としては治りやすいので順と考えていくことができますし、濇脈であれば、気血の運行が阻害をされているので、体調としては治りにくいので逆と考えていくことができます。
滑と濇はそれ以外の脈とも関係して出てくることもあるのですが、流れの状態を判断して、体調の順逆を決定することが出来るだけでも治療の予後判定には役立つので、是非、使ってみてもらいたいと思います。
まずは典型例を出来るだけ触り、典型例と一般の人に違いがあるというのを理解していき、一般の人で典型的な滑・濇ではない人は、滑・濇で言えばどちらの傾向にあるのかを考えるだけでも十分ですね。