東洋医学の治療ではツボを使うことによって臓腑経絡にアプローチをするので、どういった治療法でも全身調整と考えていくことができます。
全身調整を図るのに、一つのツボでも出来るという考え方もあるのですが、治療のスタイルとして、全身調整穴として形を決めて行ってしまえば、後は局所治療を足せば一つの治療として完成をするので、初心者向きの治療とも言えます。
昔から行われている澤田流太極療法では、百会・身柱・肝兪・脾兪・腎兪・次髎・澤田流京門(志室)・中脘・気海・曲池・左陽池・足三里・澤田流太渓を使っていくことで、臓腑経絡を整え、全身の治療を行っていくことが可能になります。
ネットで調べていくと、それ以外にも全身調整穴というのが存在をしているみたいなので、よく使用する経穴は全身調整穴として考えていくことが出来るようです。
経絡治療のやり方の中でも、脈の調整だけではなく、初心者に対応する治療として百会・懸顱・翳風・中脘・天枢・関元または気海をあげているようで、身体を整える穴のセットがあるようです。
全日本鍼灸学会東京地方会学術部で決めた全身調整穴は、学術部員がよく使用している経穴をまとめて、百会・風池・曲池・膏肓・肝兪・脾兪・腎兪・中脘・関元・足三里・三陰交を全身調整穴として決めているようです。
全身調整穴では、黒野式全身調整というのもあるようですが、こちらの場合は天柱・風池・肩井・肺兪・厥陰兪・脾兪・腎兪・大腸兪・中脘・気海・期門・天枢を使っているようですね。
他にも長野仁先生が岡部流の経絡治療をもとに考案されたという六王鍼という方法があり、後太陽・外尺沢・下復溜・外天柱・痞根・内合陽という方法があります。他の全身調整という治療と比べると、ツボの数が少ないので、扱いやすいのではないかと思います。
全身調整穴の選びかとしては、使う頻度が高い物、効果が高い物を組み合わせて自分の治療スタイルとして使っていくことが出来るので、万病に効く治療方法と言えると思います。
病能を鑑別してツボを選んでいく方法もいいとは思うのですが、使用する頻度が高いツボというのは、人によって出てくるので、その人の得意な経穴をまとめたものを全身調整と言えるのかもしれないですね。
全身調整穴を使って治療するメリットは、身体の病態を鑑別する手間が省け、全体を整えることが出来るので簡便だと言えますね。さらに、どのような人にも使っていくことになるので、いろいろな人に対して同じツボを使っていくので、全身調整で使っているツボはその人の中では得意なツボに代わっていくと思います。
触ったことがないスマホや携帯だと使いにくいですが、毎日、何度も触っているものだったら、使いやすいだけではなく、自分の使いやすいようにカスタマイズすることは可能ですし、他の人にも使い方の説明が出来るようになるので、自然とツボの効果や刺し方についての知識がついてくると思います。
デメリットとしては、身体の状態を細かく鑑別をしなくても治療が出来てしまうので、治療を考えるということに関しては、意識をしないとどんどんと低下をしてしまう可能性があり、知識の定着にはつながりにくいところがあると思います。
刺激量を調節しなければいけないような病能のときには、特に初心者の状態だと、どのような変化をするのかが読み切れないので、全身調整を行ってしまうと見逃してしまう可能性がありますね。
このようにどんな物事にもメリットとデメリットが存在するのは当たり前になるので、全身調整穴を使って治療を行っていくのであれば、身体の状態を確認することは必ずおこなっていき、一つ一つのツボを使う毎に体調や顏色、脈、お腹、圧痛などを見ていくことで身体の変化がどのように起きてくるのかを観察するようにすれば、メリットが大きい治療と言えると思います。
私自身の治療を考えたときに、ツボを使い分けることが多いのですが、ツボを使う場所として考えると、六王鍼に近いのかなと思います。お腹に鍼を使うこともあるのですが、お腹を指標としながら、他で鍼をして観察をするという方が多いので、他の全身調整穴のようにお腹への刺鍼は積極的に行っていないです。
背部に関しては、上・中・下と三部位に分けてそれぞれに治療を加えることが多いのかなという印象です。もちろん、自分の治療を完全にデータを取っている訳ではないので、イメージでしかないのですが、治療中に手が向かう所は、足、手、頭、背部になるので、大きくは間違っていないと思います。
そうやって考えてみると、自分の中でも全身調整というようなツボがあると思うので、よく使うツボはまた考えてみたいなと思っています。