掣痛(せいつう)

Pocket

 東洋医学を勉強していくときに、問診する上で重要な項目に痛みの性質を聞くというのがあります。

 痛みの性質には、いろいろな名前がついているのですが、その一つに掣痛という表現があります。掣痛は肝と関係する痛みであり、掣痛があれば肝の病変を考えていくことが出来ます。

 

 この程度の認識は国家試験受験前にあり、中医学系の書籍を読んでいくなかでもよく出てくるので当たり前の知識としてあったのですが、ふと掣痛の掣って何だろうという気持ちが湧いてきました。

 

 掣痛に関しては東洋医学の用語になるので、東洋医学系の書籍やネットを見ても、牽引痛であり、肝や肝血、筋との関係という話ししか出てこなかったですね。

 

 疑問に思った心の行く先がなくなってしまったので、癒しを求めて漢和辞典をさまよっていたら、答えは漢字にあるのではないかと思いました。

 

 掣という漢字には、おさえる、止める、ひくというような意味があるので、掣痛というのは「ひきつれる痛み」という意味でいいのだなと理解をしました。引きつれるという感覚は具体的にイメージをしにくいですが、「ひきつれ」て「おさえる」ような痛みと考えるとイメージが出来ました。

 

 引きつれるような痛みと言われても、意味が分からないので、いろいろ読んだり、患者さんと話したりして行く中で、「掣痛は足がつるような痛み」というので理解をしていましたが、「おさえるような引きつれる痛み」と理解をしたら、足がつってしまって、足をおさえるので、ようやく理解を出来た気がします。

 

 これが本当にあっているのかについては分からないので、個人の意見でしかないので、正解とは言えないですね。しかし、もし私のように、「引きつれるような痛み」というだけでは理解できない人がいるのであれば、こういった考え方で少しはイメージになるのであればいいのかなと思っています。

 

 引きつれるということでは、痙攣の攣という漢字が当てはまっているので、筋の病変は掣や攣で表すことが出来ると思います。筋は五行でいれば、木に該当するので、肝の病として考えることが出来ます。

 

 東洋医学では臓腑か気血津液で病能を考えていくので、筋を臓腑で考えていく場合には、肝になります。気血津液で考えていく場合には、筋を栄養するのは、血になるので、血の問題があったときには、筋の病が生じると言えます。

 

 血の運行は気によって成り立っているので、気の問題によっても血は影響を受けるので、気の病変でも発生する可能性があります。津液は血に関係ないかと言えば、血は津液を必要としているので、津液が不足をすれば、血の不足にもつながるので、津液の問題によっても筋の病変は発生します。

 

 東洋医学では外邪と身体の関係と言うことも大切になるので、外の環境変化は身体の気血津液の運行にも変化をきたすことになるので、外邪が身体に影響をした場合でも、血の病変が発生するので、筋の問題である、掣・攣が発生する可能性があります。

 

 ここまでくると、筋の病変はどういう状況によっても発生するので、鑑別するのが大変だという思いになるのが当然ですね。

 

 病能の鑑別には、何故、その症状が発生したのかを考えることが大切なので、東洋医学では病因ということで、身体の中から問題が発生をしているか、外の環境変化によって生じたのか、その他の原因があるのかを考えていくことが大切なので、筋の症状が出てきたときには、いつから?どんなときから?と尋ねていくことで、病能が発生している原因を鑑別していくことができます。

 

 掣痛が発生している場合は、肝や筋と考えるのが一番なのは当然なのですが、何故、そういった状況が起きたのか理解するためには、病因をしっかりと考えた上で病能の鑑別をすることが重要になるということです。

 

 東洋医学を使うのが慣れていない場合は、掣痛があれば、肝と血で考えて治療を組み立てるのは大切なことなので、掣痛は肝・血と出てくるようになったら、今度は何故、起きてきたのかを気血津液で考えていくと東洋医学的な身体のイメージが理解出来てくると思います。

 

 東洋医学は自然との関係も大切になるので、気血津液と自然(外邪)との関わりを理解していくのは、より具体的なイメージを持つためには重要になりますね。

Pocket