治療後の予後指導を行う際に、入浴はしていいのかということについて話しになることがありますが、どういった指導が適切なのでしょうか。
人によって入浴はこうだという概念がはっきりとあるのかもしれないですが、私としては、正解はないのではないのかなと考えています。ただ、それだと、どう指導をしていいのかが分からないので、入浴という刺激が身体にどういった影響を与えるのかを東洋医学的に考えてみたいと思います。
お風呂に入ると身体がどうなるかを考えたときに、多くの人が当たり前のように体感をしているのが、身体が熱くなって、発汗をするということだと思います。お風呂というのは、温かいお湯につかる行為なので、陽気が多いところに身体を置いておくので、身体に陽気が強く影響をするという行為と言えると思います。
陽気が強くなると、身体の気血にも陽気が加わるので、動きという陽の状態になり、気血の運行が活発になります。気血の運行が活発になるということは、身体を栄養する力が全身に巡ることになるので、回復する力が強くなる傾向があります。ただし、気血の運行が活発になることで、気血が不足をしている人や体力がない人は、疲労感が強く生じてしまいます。
入浴後に身体が温まるし、すっきりもするけど、疲労感が出て、少し寝たいというのはよくあることだと思いますが、これは気血の運行が活発になることで、身体はすっきりも感じるけど、普段よりも気血の消耗が行われているので、疲労感が出てしまい、身体をゆっくりと回復させるのに、疲労感が出て、だるくなり、寝たいという状態になります。
体力がある方、実の状態の方に取ってみれば入浴という刺激は気血の循環も生じるので、身体がすっきりする傾向があるでしょうが、体力がない方、虚の状態の方に取って見れば、疲労感が強くでてしまうことがありますね。
ただ、湯治という身体に大きな病気をしている人が温泉で長期療養をすることがあるので、この場合は、虚を強くしてしまうのではなく、身体の陽気を長期的に強めていこうという考え方だと思います。
人が生きている状態は温かいのが通常なので、陽気が十分にないといけないのですが、大病によって、生命力である陽気が不足をしてしまった場合は、湯治をすることで、陽気を身体の中に多く取り込み、生命力を高める働きがあるのではないかと考えられます。
こう考えていくと入浴は、注意することがあっても身体にいいことだと考えることができますが、熱を持っている人が入浴をすると熱を強めてしまう結果になるので、悪化をする可能性があります。現代医学的には、赤く腫れている場合は入浴を避けるというのは、東洋医学的には熱の人では熱を避けるというのに似ていますね。
ただ、熱には熱の治療が効果はあるとも言われるので、お灸が使われることがありますが、この場合は、ピンポイントに用いられることが多いと思います。
温泉の効能に、捻挫や打ち身が入っていることがありますが、これを東洋医学的に考えると、気血の循環をよくすることによって、気血の阻滞である腫れを低下させ、不通則痛・不栄則痛の状態を改善することで痛みを軽減していると考えられます。
いい効能ばかりになってしまっていますね。入浴後に発汗をすることが多いですが、発汗は津液を体外に放出してしまうだけではなく、気も体外に出してしまうので、津液と気の不足を発生させる可能性があります。津液が不足をしてしまえば、血は津液を必要としているので、血の不足を生じてしまう可能性があります。
入浴という現象は温かいということでは陽と考えることが出来ますが、お湯は水を温めたものなので、本質的には水である陰の性質があると考えることができるので、陰が身体に及ぼす影響も考えていくことが必要になります。
人は加齢とともに、生命力である陽気が不足をするというのが当然なのですが、身体の滋養の働き、潤いという水分で考えていくときには、陰気が段々と不足をしていくのが加齢とも言えるので、加齢によって低下しやすいのは陰気だと言われますが、陽気の不足も生じるので、最終的には陰陽両虚の状態になります。
陰に身体つかるとどういう状況になるかということですが、陰気が身体に作用をすると良い面では、潤いという陰気を与えると考えることが出来ます。悪い面で考えていくときには、陰気は重く停滞しやすい性質があるので、身体がだるくなる傾向があります。
陰気が不足をしている人であれば、陰気を補充できるという働きがありますが、発汗によって津液が出てしまうと陰気の不足が生じるので、悪い面もありますね。ただ、陰気の補充が十分であれば、陰気の入れ替えを考えることが出来るので、よい温泉であれば、清気の補充が出来ると言えますね。
陰気の状況を考えるのであれば、自然と関係をする陰気の方がいいですし、気は循環をしているのが正常な状態なので、源泉から流れてきて、排泄させるような温泉の方がいいとも言えるので、源泉かけ流しの温泉であれば、新鮮な陰気の力をもらえると考えられます。
こう考えていくと、温泉は身体にいいという結果で考えていくことが出来るのですが、気血津液が多く不足をしている状態だと、大幅な体力の低下を招く危険があるので注意が必要なものとも言えますね。
入浴で身体が悪化をするのでよく言われるのが、「湯冷め」になるのですが、入浴によって気血の循環が活発になれば、気血の巡りがいい状態にもなりますが、熱を放散するために、腠理が開いた状態になっているので、外邪が侵入をしやすい状態を作っているので、入浴後の管理は非常に大切になると思います。
入浴後に身体熱くなっているので、冷えていると気持ちがいいので、冷房や扇風機に当ることも多いでしょうが、注意をしないと寒邪が身体に影響を与えてしまい、せっかく流れがよくなった気血の働きを低下させてしまう可能性があるので注意が必要です。
そう考えると、入浴によって身体が温まって、緩んでしまった状態を、引き締めた状態に戻すのには水風呂を使うと寒邪という刺激を一気に身体に与えることになり、全身を引き締めるので、熱を体内に残す作用があると考えることが出来ます。
頭髪が長い人は、髪の毛が濡れた状態が持続をするので、冷えを持続させてしまうと考えることも出来ますが、頭寒足熱が正常な状態なので、頭部が冷えているのは良いと考えることも出来ると思います。
こうやって考えていくと、どの部分を見るかによって入浴がいいのか悪いのかが変わってしまうので、その人の感覚や考え方が大切になってくるのではないかと思います。
私は、入浴は気持ちがいい物なので、入ってどうぞと伝えることが多いのですが、気血の循環がよくなってしまい、疲労感が強くなってしまうので、治療後の入浴は止めた方がいいという話しをすることがあります。