鍼灸治療を行う際にツボを使っていきますが、ツボを使う順番はどうやって決めたらいいのでしょうか。
病能の鑑別、使用するツボ、ツボを使う順番、使用する道具は全て自分で考えていかないといけないので、最初のうちはどうやったらいいのか悩むことが多いのではないかと思いますので、今回はツボを使う順番について書いてみたいと思います。
ツボを使う順番には正解がないので、自分が治療でどのように考えていくのかが大切になるので、身体の診方が必要になってくるのではないかと思います。
例えば、ストレスが強く慢性的に腹痛がしている人であれば、ストレスによって肝鬱気滞という状態になってしまい、肝の疏泄の失調により、脾胃の働きに障害が出て腹痛が生じているのではないかと考えていくことが出来ます。
この場合で重要になってくるのは、東洋医学の治療概念である標本を使っていくというのが重要になります。ここで生じている腹痛の病能の本は肝鬱気滞であり、脾胃の失調が標と考えていくことが出来るので、治療において標本のどちらを重視して治療をするのかで使うツボの順番が変わっていきます。
肝鬱気滞を改善しなければ脾胃の失調である腹痛が改善をしないので、肝鬱気滞から治療を始めて、弱っている脾胃を補う治療を行うのであれば、肝鬱気滞に対するツボを先に使うことになります。
この考え方は正解と言えるのですが、脾胃を少し補ってからの方が肝鬱気滞も改善をしやすいと考えたり、腹痛をとにかく軽減した方が楽ではないかと考えたりすれば、脾胃に関連するツボを先に使うことになります。
基本は標本から考えて配穴を決定していくのですが、肝鬱気滞から生じた腹痛があり、ぎっくり腰をしているようであれば、腰の治療を先に行わないと動けないので、ぎっくり腰を先に治療をする必要があるので、使うツボの順番は、その時の患者さんの状況によって変わっていくことが多いです。
身体の状態を少し落ち着かせてからの方が治療の効果が高いと考えていくのであれば、身体の状態を落ち着かせるツボや治療を先に行う必要があるので、その場合には、肝鬱気滞・脾胃に対してのツボは後回しになります。
特効穴や経験による効果的なツボがある場合には、まずそういったツボを使って、症状を軽減させてから、身体の体質を変化させて症状の再発を防ぐことになるので、その場合も肝鬱気滞・脾胃に対するツボは後回しになりますが、この場合は、ある程度の経験や知識が必要になるので、キャリアが付いてくることで使うツボの順番はまた変わっていくと思います。
先ほどから説明に使っている、肝鬱気滞・脾胃の問題による腹痛であれば、肝鬱気滞に対して効果的なツボを最初に使ってから、そのツボをフォローするツボを使い、脾胃に対するツボを足していくと、ツボを使う順番が自分の中で決まってくるのではないかと思います。
病能のイメージとツボに関連する知識がないと使う順番が決めることができないので、知識の学習だけではなく、ツボや流注に対する知識を高めていくことが、ツボの順番を決定していくために重要だと思います。
生体は物ではないので、治療をしていくと変化をしていくので、圧痛や腹診などの所見、症状を確認しながら行っていくと、ツボの効果を発揮できているのかを確認できるので、確認をしながら、ツボを使っていくと、ただツボの順番を決めて終わりではなく、生きたツボの順番が自分の中で出来上がってくると思います。
例えば、先ほどまでの例だと肝鬱気滞に対しては太衝を使ってみて、腹痛が改善しない場合は、太衝の使い方が悪かった可能性があるので、ツボの位置、深さを再度、確認をして、それでも効果が発揮できていないのであれば、太衝のツボを助けることを考えるのが大切になります。
その場合は、経絡の流注で考えるのか、表裏の経絡である胆経を使うのか、兪募穴を使っていくのかを考えていくこともあるでしょうし、一度、肝鬱気滞から離れて脾胃を少し治療してから様子を見るという方法もあるので、使ってみたツボの効果をしっかりと確認をしながら治療を行っていくことが大切になります。
形だけを決めてしまって、それに従うという方法は、治療者側からしてみたら楽になるのですが、ツボを使う順番や変化、どれぐらい変化をするのかというのは治療中に確認をしていかないと分からないことになるので、経験として積み重ねていく上では、施術・確認・施術・確認と行っていくことが大切だと思います。
私はツボを使っていく過程では、身体の状態を確認しながら治療をするということも多いですが、とりあえず、考えたツボを一気に使ってみてから確認をしていくという場合もあります。
全身の状態が変化をしないと改善をしないというのは、症状が重い人、体質改善を中心とした人に多いので、そういった場合は、とにかく全身の状態(気血津液・臓腑)を整えてから個別に治療を足していくということもしています。
ツボを使う順番には正解がないので、自分の中でどれだけイメージしていくかによるのですが、誰かの下についているのであれば、そのやり方に従って使うツボを決定していくといいと思いますよ。