東洋医学は局所だけを考えるのではなく、身体の状態を考えて行うものなので、症状と体質は一致をしないということができますが、実は一致をしているとも言えます。
一致をしていないのに、一致をしているというのは矛盾しているだろうと思うのは当然ですよね。東洋医学を学習すると、体質と症状が一致するのは当然のことになるのですが、一般の方の考え方から考えると一致をしていないのではないかという疑問があるので、そこが矛盾をしている点になります。
治療者の方でも勉強をして理解をしてこないと体質と症状が繋がっているのが理解をしにくいので、どういう意味なのかを説明しながら書いてみたいと思います。
例えば、耳鳴と言えば、耳に関係するのは腎であり、経脈の流注として関係をするのは、手太陽、手足少陽なので、耳の症状と治療に関係するのは腎と手太陽、手足少陽と考えるのが普通だと思います。
一般の人からしてみれば、症状は耳にあるのに、手や足を使って治療するということは関係があるように思えないので、不思議に感じることが多いと思います。
鍼灸では東洋医学を用いて治療を行うので、経絡の走行や臓腑の関係を使って治療するので、東洋医学の経絡・臓腑の勉強をしていないと理解を出来ないのは仕方がないところでもあります。
東洋医学を勉強した人でも、初めの頃は、経絡と繋がっているところ、臓腑と関係をしやすいところは理解することが出来るのですが、他の情報になると知識がないと分からなくなるので、なかなか考えが及ばないことがあると思います。
例えば、先ほどの耳鳴りは、いろいろな原因によって発生をする物であり、脾気虚に場合でも耳鳴りが発生をすることがあります。
脾気虚は、食事をしっかりと食べていない場合(飲食)、不摂生な食事をした場合(飲食)からでも発生をしてしまうことがあり、原因としては身体に十分な栄養が取り込めないので、耳の栄養が不足をしてしまい、耳鳴りが発生をしてしまうことがあります。
仕事が忙しくてなかなか休めないような状況だと身体が疲労困憊をしてしまい、回復が出来なくなってしまい(労倦)、四肢である肌肉を休ませることができなくなり、脾気虚になり、気血の生成が出来なくなってしまい、頭顔面部栄養を送る働きが低下をしてしまうので、耳の栄養不足でもある耳鳴りが発生をしてしまいます。
こうやって考えると、腎・手太陽・手足少陽とは関係がない原因によっても耳鳴りが発生をするので、治療対象は脾胃という経絡に変わります。症状と関係をしやすい経絡・臓腑はもちろん使っていくことが出来るのですが、病気の本体としては、脾胃になるので治療として重要なのは脾胃になります。
耳という単語だけでは、考えが繋がるのは少ないですが、経絡・臓腑の働きをしっかりと理解をして、身体の正常状態をイメージすることが出来れば、病能の把握もいろいろな角度から見ていくことができます。
脾気虚の場合は、先ほどの説明で使ったように、飲食の問題や労逸(動き過ぎの労倦・休み過ぎの労逸)から発生をしやすいという病因の概念がしっかりと入っていると、病能を鑑別していくことが出来ます。
鑑別には、症状を知っていくことで、臓腑・気血津液を分類することは大切なのですが、今回の説明のように病因を知り、病因からどの臓腑に影響しやすいかというのを理解していくことが体質と症状を繋げていくヒントになることが多いです。
私も勉強を始めて最初の頃は、耳鳴と脾の働きは繋がりにくかったですし、耳鳴と肝胆を繋げていくのが困難でしたが、臓腑の働きがどういう機能があり、病因との関わりには何があるのかを理解していくことによって、段々と繋がっていきました。
肝胆の場合には、ストレスと関係をすることが多いので、過剰なストレスが発生をしてしまうと、肝気の阻滞が発生をしてしまい、気滞となり、気滞が熱化をして、頭部に火が炎上をして、頭部の症状をきたしてしまうことが多いです。
国家試験に向かう段階であれば、耳の疾患は腎と考えることが重要なのですが、臨床は筆記試験ではないですし、症状を自動で話してくれる相手ではないので、自分で考えて質問をし、患者さんの体質と症状を自分の中で組み立てていくことが大切になります。